◆ 廊下は走らない


学校に着くや否や、廊下を駆け回る女生徒達。
屹度、猪口冷糖を渡す相手を探しているのだろう。
誰か。
そんなのは容易に想像できる。軽く息を吐いて上履きに履き替える。
教室に向かおうとする私の行く手を阻む、数名の女生徒達。

「みょうじさん!太宰くん、何処に居るか知らない!?」

「えぇと……職員室、かな。」

太宰が逃げ込むとしたら職員室がうってつけだろう。
職員室に猪口冷糖を持ち込もうものなら当然没収されるだろうし、かくまってくれそうな仲良しの織田先生も居るからだ。

「だから、教室で待ち伏せするのが一番だと思うよ。」

女生徒達は納得した様子で、私に軽い礼を言うと太宰の教室へ大移動が始まった。
手を振り女生徒達を見送る。
直後、後ろから痛い視線を感じた。


2019.02.01*ruka



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*confeito*