冴島は呼吸状態も安定しているため、酸素マスクからカニューレに代わりベッドもICUの端へ移動された。

しかし、神崎はまだ目が覚めず状態も安定していないため、ICUの個室へと移った。





藤「妊娠してなかったら、結婚しようと言ったかという答えだけど。」



冴「うん。」



藤「いや、俺ね。ずっと考えてたんだ。


よくわかんなかった。」



冴「はぁ?」



藤「分かんないよ。はるかが妊娠してなかったとき、俺が結婚したいと思ってたかなんて。だってその時には戻れないし。」





冴島は呆れかえっている。





藤「いや、違うんだ。俺、今の気持ちならはっきりわかる。俺は、はるかと生きたい。











だから、結婚してほしい。

これじゃダメかな?




あれ?返事は?」





冴島は答えず、天井を見つめていた。





冴「目を覚ました時、私最初に誰の事を思ったと思う?」



藤「俺?」



冴「それはない。」



藤「えっ、なんだよ。誰だよ?」



冴「赤ちゃん。







私とあなたの赤ちゃん。」





藤川は冴島のお腹に手を当てる。
二人で微笑みあった後、藤川は冴島のお腹に手を当てながら、切なげにICUの個室を見つめた。





藤「なあ、はるか。」



冴「ん?」



藤「はるかと赤ちゃんを救ってくれたの、神崎なんだ。」



冴「うん。……ヘリでね意識が朦朧とする中、酸素マスクをつけてくれた神崎先生が『助けるからね、赤ちゃん。だから、ママも頑張って。頑張んだよ』って。お礼…言わなきゃ。」



藤「うん……。」



冴「どうかした?」



藤「藍沢には、はるかが安定するまで言うなって言われたんだけど……。神崎、まだ目を覚ましてないんだ。」



冴「え……?うそ…。」



藤「ICUの個室に入ってる。状態も安定してなくてな。脈が乱れたり……、ずっと藍沢が付き添ってる。でも、ほんと凄いよな。神崎さ、自分も危険な状態なのにだよ?はるかは無事なのか、毒物が何か、それでもって、灰谷にヘリの中で匂いはあったのかって聞くんだ。意識がなくなる寸前まで自分以外の他の奴のこと助けようとするんだ…。かっこいいよ、神崎。」





冴「神崎先生が目を覚ますまでに元気になんなきゃ!目覚めたときに元気な姿見せないと!」





冴島は個室のある方へ目を向けた。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





小児科のロビーでは、橘と三井が話していた。




三「稜が?」



橘「あぁ、自分に何かあったら優輔にって…。」



三「あの子…。本気で?」



橘「意識失う直前に伝えてきた。」



三「…そう。でも、あの子らしいね。」



橘「そうなんだよ。自分の事より他人の事を優先する。」





橘は三井に優輔のドナーになろうとしている神崎の話をしていた。
三井の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇





藍「稜、いつになったら目を覚ますんだ?」





藍沢は神崎の手を握りしめながら話しかけている。でも、反応はない。





藍「目を覚ましたら、お前に伝えたいことが沢山あるんだ。」




藍沢はそう言いながら涙を流した。



早く一緒に帰ろう。



そう呟いた。