患者の秋本は無事に目を覚まし精神科へ移った。

しかし、冴島や神崎は依然と目を覚ます気配すら見せない。





緋「藍沢と藤川は?」



白「藍沢先生は神崎先生に、藤川先生は冴島さんに付き添ってる。」





白石と緋山はスタッフルームで記録を書いていた。





緋「藤川は分かるけど、藍沢は珍しいね。」



白「目が覚めたときに、そばに居てやりたい。って。」



緋「神崎も愛されてるなー。」



白「うん。神崎先生さ、自分も危険な状態なのにずっと冴島さんを心配してた。洗浄が終わってから意識失うまでずっと。怖くて仕方ないはずなのに。それに、藍沢先生のあんな優しそうな顔初めて見た。」



緋「確かに。」





そんな時だった。
意識が回復し、精神科に移ったはずの秋本が救命に運ばれてきたのは。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇





白「秋本さん、病棟の渡り廊下から飛び降りた。」



緋「奥さんの目の前で。」



藍「FASTしよう。」





秋本は大量出血で、通常ならオペ室で行う処置も間に合わないと判断し、初療室で緊急開腹した。


肝臓の破裂、小腸からも大量に出血しておりサテンスキーで必要なところを遮断しても出血が止まることはなかった。





藍「体温は?」



白「35度。ベースエクセス マイナス8。」





藍沢・白石・緋山らが目を合わせ頷く。





藍「ガーゼあるだけくれ。」



雪「はい。」





藍沢は、雪村からガーゼを受け取り患部に詰めていく。





藍「ここまでにしとこう。腹は閉じずにICUに運ぶ。





ダメージコントロールだ。」





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「ダメージコントロール?」





待合室にいる秋本の奥さんに説明する白石。





白「かなりの量の輸血を行ったため、血液の凝固因子が足りなくなり出血が止まれず
このまま続行すれば命に危険が及ぶ状態でした。なので、手術をいったん中断しました。」





「中断?今、あの人は?」



白「ガーゼパッキングといって止血のための応急処置をしてICUに運びました。そこで全身状態の回復を待ちます。24時間経過した後、状態を確認してどうするかを決めます。」



「どうするかって…?」



白「手術を再開するかどうかを。」







◇ ◇ ◇ ◇ ◇





24時間が経過し、秋本の状態も良いため手術を再開し、無事に秋本の命を救うことができた。





「ありがとうございました。」



藍「ご主人が本当に行きたがっていたかどうかは私たちにもわかりません。ですが、少なくとも身体は生きたがっていた。肝損傷に腸管損傷、同じケガで命を落とす人も少なくありません。ですが、秋本さんは生きた。ダメージコントロールは患者さんの生命力に問いかける行為です。秋本さんの体は生きたいと答えてくれた。身体が答えてくれるまで私たちは24時間待った。でも、心が答えてくれるまでにはきっともっと時間がかかると思います。」





藍沢の言葉に涙を流す秋本の奥さん。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇






ピッ…

冴島のモニターに新たな波形が現れる。





藤「はるか?…はるか!」





藤川が呼びかけると、冴島はゆっくりと目を開ける。

呼吸器を外し酸素マスクに変えていく。




藍「ここで維持して。」





藍沢が脳への影響を調べる簡単なテストをしている。





藍「明らかな麻痺も見当識障害もない。」



藤「……よかった。」





藍沢からその言葉を聞いた藤川は笑顔で涙を流した。


その様子を見た藍沢は隣のベッドでまだ目を覚まさぬ神崎を見つめていた。