救命に新しく加わった神崎。
そして、救命に戻ってきた藍沢。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『おはよう』


藍「おはよう。住むとこ見つかったか?」



『いや、なかなか病院の近くって無いもんだね……。』



藍「俺ん家……使うか?」



『耕作のところ?いやいや、悪いよー』



藍「俺は構わないが。部屋も空いてる。病院から車で10分程度だ。」



『まじ!近いね!』



藍「お前が良ければ、俺は構わない。」



『え……お言葉に甘えようかな。病院から車で10分って魅力的。』



藍「あとで鍵渡す。好きに使ってくれていい。」



『うん。でも、最初だけは一緒に来てよね?場所わかんないし。』





そう、笑顔で藍沢に問いかける神崎。藍沢もハニカミながら「あぁ」と返事を返す。





藍「変わらないな。」



『ん?』



藍「いや。9年も会ってないから、もっとギクシャクするかと思った。」



『ふふ。有り得ないでしょ。私と耕作がギクシャクって(笑)それに、連絡は取り合ってたじゃん(笑)』



藍「それもそうだ。」



『これからもよろしくお願いしますね、藍沢先生。』



藍「こちらこそ、神崎先生。」





お互いを、名前呼びから苗字呼びになるのは9年前と何ら変わらない仕事モードへの切り替えの合図。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





緋「ヘリで吐いた!?」



初療室で灰谷とヘリに乗った藤川が、灰谷の失態について話していた。






藤「よりによって、ヘリん中で。灰谷だけに吐いたーって(笑)」



緋「笑えない。で?どうしたの?」



藤「あぁ、飴あげたよ。」



緋「飴?」



藤「たまたま、持ってたから。で、遠く見てろって。そしたらめちゃくちゃ素直に遠く見て飴なめてやがんだ、あいつ。」



緋「子供か。」





当の本人は、気分が悪そうに胸元を擦っていた。





『灰谷、大丈夫か?』



灰「は、はい。」





今日のヘリ担当は、

フライトドクター:藍沢 耕作
 フェロー   :横峯 あかり





緋「うわ、何かやらかしそう。」



藤「飴、なめてたりしてな。」



緋「まさか。」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇





そのまさかである。
案の定、横峯も酔って飴をなめている。
藍沢も冴島もあきれた表情をしていることに、横峯はまだ気づいていない。





藍「こちら、翔北ドクターヘリ。17歳、女性。右足関節の開放骨折だ。間もなく到着する。」



『(無線)了解!』





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





親の心、子知らずという
ことわざがある。

確かに、そうだ。
親にはなっていないけど
今は、その心が
すごく理解できる。

毎日思うから。

教える者の気持ちを、
教わる者は分かって
くれているんだろうかと