「……、…呉羽、」
「んー……」
微睡みの中名前を呼ばれて、重たい瞼を開ける。秀一さんと視線が交わるとフッと笑って、触れるだけのキスをされる。
昨日はどうしてたんだっけ、とふと思って、けれどすぐに昨日の夜に何をしたのかを思い出して赤くなったであろう顔を両手で隠す。
「照れることでもないだろう」
「や…昨日のこと、思い出しただけです…」
「制服は、クリーニングした方がいいかもな…」
「ですねぇ……」
身体を起こして、結局最後まで着たままだった制服を見て思う。汚したりとかはしていないけれど、どうしても皺が出来ている。スカートのプリーツも結構崩れている。
「予備があって、よかったですね…?」
「予備が無かったら、さすがに途中で脱がすさ」
「楽しんでたくせに…」
昨日はどうにも制服でそういうことをするということを楽しんでいたような気がする。
私の隣で転がったままの秀一さんを見ればフッと笑って、どうやらその通りらしい。月曜日になる前に予備の制服を出しておかないとな、と考えていると、ふいに秀一さんに引き寄せられて私は秀一さんを押し倒すような形で彼の上に乗った。
「えっ…秀一、さん?」
「そう身構えなくても、朝から襲ったりはしない」
「えぇー…」
「そんなに俺は信用がないか?」
「ときどき」
私が秀一さんに体重をかけないように隣に移動して答えれば、また、秀一さんが笑う。うつ伏せに転がる私の体を引き寄せて、秀一さんの方を向かせられて腕枕をされる。そして、気付いたら目の前には秀一さんの顔があって、キスをされたのだと気付いた。
「ん…起きないん、ですか?」
「時間的には、起きた方がいいんだがな…」
「そうなんですか?……あ、ホントだ」
腕を伸ばして枕元の携帯を取って、時間を確認する。もうお昼近くて、だから秀一さんは私の事を起こしたのだろう。
「でも、もう少しこのままがいいです」
「制服のままだと、動きにくくないか?」
「んー…ちょっとだけ、ですかね。でも、それよりも、秀一さんと一緒にいたいです」
秀一さんにぎゅっと抱きついてそう言えば、秀一さんも同じなのか私の額にキスをして頭を撫でる。その優しい撫で方に、ついつい瞼が重くなってしまいそうなのを堪えながら頬を緩ませる。
「今日は、お仕事お休みですか?」
「あぁ…。もう少ししたら、また忙しくなるだろうがな」
やっぱりな、と思いながら、秀一さんの背中に回す腕の力を強める。寂しいのか、なんて言われて、一瞬考えたけれど私は秀一さんの胸元にぐりぐりと頭を押し付ける。
未来を知っているというのは、武器のようで凶器だ。使い方を間違えれば、それこそ誰が死ぬことになるか分からなくなってしまう。
「絶対、私の傍にいてくださいよ」
「あぁ、ちゃんといてやるから安心しろ」
「……よかった、」
なんて、酷い約束だろうか。時間が進めば、私の前から秀一さんがいなくなるのに。一時的な別れだと知っているのに、そんな約束をさせるなんて。
「今日は随分と甘えてくるな」
「嫌、ですか?」
「嫌なわけないだろう」
ちゅ、とリップ音をさせながらキスをされて、ふふ、と笑いながら口角を上げる。やっぱり私はこの人が好きなんだなぁと思いながら離れないというように彼に抱きついた。
2016.04.16
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