「こんなとこで何しとんのや」
「……買い物?」
後ろから突然書けられた声に、嫌な予感がしつつ振り返れば色黒の少年がいた。隣にはコナン君がいて、果たしてこの二人が関わるような事件があっただろうか、と思考を巡らせる。そもそも料理がそこまで出来るほうじゃなかったはずの二人が、何故こんなところにいるのか。
「何か事件でもあったの?」
「ちゃうちゃう!和葉に付き合わされて星河童吾の超奇術ショーに来ただけや!」
「あぁ、そういえばそんなのやってたね。でも何で買い物?」
「何か蘭たちが控室で範田さんたちと盛り上がって、一緒に食事することになったらしいからそれの買い出しするんだとよ」
「へー。頑張って」
私他に行くところあるから、と言って先に逃げておこうと思った矢先、ガシリと肩を掴まれる。逃げたい。今すぐその手を振り払って逃げたい。そもそも私遠山さんと話をしたことない。
「どうせやったら1人ぐらい増えても平気やろ。お前も来いや」
「嫌だよ。そもそも呼ばれてないし」
「いいんじゃねぇの?別に。オメー蘭とも仲いいだろ」
「クラスメイト程度だけどね!」
あくまで私の中では。ただ、名前で呼ばれているし向こうがどう思っているのかは知らないが。まぁ、適当に深くなりすぎない関係を保ちつついきたいと思っているのは確かだ。
「あれ、呉羽?」
突然聞こえたその声に、私は諦めたように振り向く前に息を吐いた。
+ + +
「じゃあ、沖田君の彼女やないん?」
「違う違う!幼馴染?みたいな感じだよ。別に恋人いるしね」
「え、そうなん!?」
「あ、この前の?」
「あははー…」
料理する手を止めること無く笑う。秀一さんのことはまぁ年上の恋人、程度に話している。正直工藤君や服部君と話してて変な勘違いをされたくないというのが一番の理由だ。変に勘ぐられても面倒くさい。だったら、恋人がいるということさえ話していれば変な嫉妬はされないだろうという考えだ。
「にしても、呉羽手際いいね」
「ホンマやわぁ。さっきの男共とは大違い」
「家で作ってるからね。私親いないからほぼ一人暮らしだし」
食材をまともに切ることさえ出来ない男二人には、早々に出て行ってもらった。そういえば秀一さんって沖矢さんになってからは有希子さんに教えてもらって料理をするようになったけれどその前はどうだったのだろうか。たまにコーヒーとか紅茶を淹れてもらうことはあるけれど、ソレ以外でキッチンに立つのはあまり見たことがない。
(器用そうだし工藤君と服部君以上には料理が出来ると思うけど……)
沖矢さんになってから、煮込み料理が多かったけれどいろいろ作っていたし。そんなことを考えながら、手を動かしていく。蘭ちゃんや和葉ちゃんも普通に料理をしている辺り、家でもしていることが多いのだろう。うん、最初から男二人を手伝わそうとしたのが間違いだったのかもしれない。
三人でどうにかこうにか料理を作り上げて、一息つく。
「なんとか様になったわ…」
「ごめんね三人とも…」
「あ、いえ…」
そんなに手の込んだものは作っていないような気がするけれど、見栄えに問題はないだろう。そんなとき、部屋に入ってきた星河さんが工藤君と服部君のことを尋ねた。
「キッチンで傷の手当を…」
「包丁で指切って」
本当、将来の二人はどうなるのだろうか。
30も手前まで来た女からすれば将来的にはもう少し料理が出来るようになっててほしいところだけれど。自分にもしものことがあったときも、料理が出来るのならそこまで食事の心配はしなくて済む。
私がそんなことを考えているとどうやら展子さんを呼んできてほしい、とのことで星河さんがそれを了承する。遠山さんが展子さんがいる部屋のことを尋ねれば、星河さんは私たちに行ってみるかを尋ね、毛利さんと遠山さんはどうやらノリ気らしい。一応、私もついていった方がいいだろうか。この後のことを考えると、だけれど。
「えらい狭い廊下やなぁ…」
「なんか薄暗くてちょっと不気味〜…」
「その右側の扉が先生の部屋なんだけど…電球が切れてるのかな…」
一番前に星河さんがいて、その後ろに隠れるように毛利さんと遠山さんが歩く。私はその一歩後ろを歩いていた。
星河さんがカチカチと電気を点けようとスイッチを押すと、フッ、と電気が消える。
「停電、みたいですね」
「あぁ。ちょっと見て来ようか、」
私の呟きに星河さんがそういった瞬間、パッと部屋の電気が点く。刹那、突然目の前に現れた血まみれのソレ。
「きっ…きゃああああ!!!」
女の子二人の悲鳴が、家の中に響く。突然現れていた、血まみれの展子さん。ソレを見て、私は顔をしかめた。
2016.04.20
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