*2015年七夕
「そういえば今日、七夕ですね」
「そういえば今日だったか……」
ふと今日の日付をカレンダーで確認して思い出す。7月7日は、七夕だ。織姫と彦星が年に一度だけ、会うことを許される日。
けれど、外は曇っていて空を見ても星は見えない。
「雨が降ってたら、会えないんですよね…?」
「らしいな。雨が降るのは、2人が悲しんで泣いているからだという話もあるぐらいだ」
「曇りだと、どうなるのかな……」
1年に1度しか会えないのなら、そんなときぐらい会いたいだろう。七夕伝説は地域によって様々で、ハッキリしないことが多い。雨は会えて嬉しくて流す涙、なんて話もあるぐらいだ。
「……呉羽、」
ソファーに座っていた秀一さんが、私の名前を呼ぶ。隣に腰掛けると秀一さんは私の身体を引き寄せて、横向きに座らせた。
どうしたのか尋ねると、深い意味はない、と言われる。ちゅ、とリップ音がするようにキスをされて、無意識に頬を緩めた。それを見たからなのか、秀一さんはフッと笑って、私を腕の中に閉じ込める。
「地方にもよるが、織姫と彦星が会うにはあと2回チャンスがあるらしい」
「2回?」
「翌月の8月7日と、旧暦の7月7日だ」
七夕伝説というのはそれこそ昔からある話で、発祥も勿論旧暦の頃だ。その頃の暦に祝うこともあるし、旧暦だと毎年日付がバラバラになってしまうから、ということで7月7日の翌月、8月7日に祝う地域もあるらしい。8月7日なら旧暦からそこまで離れた日付にならないことと、雨の日が少ないから、という理由かららしい。
それならば、7月7日に会えずとも2回は会うことが出来る。
「雨が降ったら来年までお預けってわけじゃないんですね」
「地方によって、いろいろあるがな」
雨が降ってもカササギが会わせてくれるって話もあるらしい。そう言って、秀一さんは私の額にキスを落とす。そのまま瞼、鼻梁、耳、頬へと場所を変える。
「一年に一回は、耐えられそうにないな」
「ん…私も、耐えらんないです」
身体を引き寄せられて、口を塞がれる。逃げないようにだろうか。後頭部を押さえられる。離れた唇から、熱っぽく私の名前を呼ばれて。頭がクラクラしそうになりながら、秀一さんの服を掴む。そのままソファーにゆっくりと押し倒されて、私は秀一さんへと腕を伸ばす。
「今日は、随分と積極的だな」
「恋人が、逢瀬を許してもらえる日でしょう?」
それもそうだな。秀一さんはそう言って、私の首筋へと顔を埋める。チクリとした痛みを首筋に感じながら、身を委ねる。何度か甘い痛みを感じた後にを秀一さんの舌が這うようにして首筋から鎖骨へと移動する。そこにも、甘い痛みをさせながら痕を残していく。
「っ…隠せる程度に、お願いします」
「聞こえんな」
聞こえてる、くせに。そう思っても私が彼の行動を止めないのはそれがあることによって愛されていると感じるからだろうか。秀一さんのこの行為に、喜びを感じている。
「っ、あ…!」
秀一さんの指が、私の身体をなぞる。痕を付けた首筋とは反対側に顔を置いて、手は身体を弄る。少しだけ体温の低い手が、熱を持った私の身体に心地が良い。
「待っ、て、ここ、」
「最後までは、しない」
秀一さんに、口を塞がれる。舌を入れられて、歯列をなぞられる。時折離れる唇から漏れる自分自身の声に恥ずかしさを感じながら、秀一さんの身体を押しのけるように肩を押しても敵わなくて。
唾液が伝い落ちるぐらい、溶けるんじゃないかっていうぐらい、求めるようにキスをする。服を着たままでここじゃ嫌だって思っているのに、1つになってしまいたいような気もしていて。
与えられる気持ちよさに身を委ねていると、唇を舐め取られて秀一さんの唇が離れる。
「そんな顔をされると、抑えがきかなくなる」
「っ、ん……ここじゃない、なら…しなくて、いいです」
秀一さんに腕を伸ばせば、フッと笑った後に口を塞がれた。
2015.07.07
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