ぎゅっと秀一さんに抱きついて何度も私が謝罪を繰り返しているとそれを止めるように秀一さんにキスをされる。何も言うな、とでも言うように、何度も何度も。
「んんっ…ふ、待っ…」
「っ、は……もう、いい。何も言わなくて…」
「っ、ごめん、なさい…」
鼻の奥がつんとして、泣きそうになるのを堪える。早く、全てが終わってしまえばいいのに。終わってしまったら秀一さんはFBIに戻ってしまうのだろうけれど、それでも。私は彼がいなくなることの方がずっと怖い。
「嫌な、質問をしたな…」
くしゃりと頭を撫でながら、秀一さんが言う。その言葉に、私はふるふると首を横に振った。
「最初に利用したいならすればいい、なんて言ったのは私なのに…ごめんなさい」
「気にするな。呉羽が怖がる気持ちも、分からなくはない」
「ん……」
秀一さんにぎゅっと抱きついて、息を吸う。胸いっぱいに広がる、秀一さんの匂い。タバコと体臭が混ざった、心地のいい匂い。
「私、ずるいですね。全て知ってるのに…。言えば、組織がすぐに壊滅するかもしれないのに、」
「構わん。そもそも、呉羽に頼って捜査をしようという方が間違ってるんだ」
「そう、かもですけど…」
私が知っていることは、証拠が無い。実際に原作で載っていたことを言ったとしても、それは証拠としては不十分だろう。
秀一さんが私の額にキスをして、口元に孤を描く。私が腕を伸ばして秀一さんの頬に触れれば、それが合図かのようにキスをされる。
「ん……」
「呉羽、」
名前を呼ばれて、秀一さんを受け入れるように口を開く。そうすれば、私の口内を秀一さんの舌が侵食していく。
「だめ……ん、ふっ」
「は……これ以上は、お預けだな、」
秀一さんの言葉に、コクコクと頷く。一応屋上は誰でも出入りが出来るようになっていて、いつ人が来るかは分からない。多分、誰かが来たら私が気付くよりも先に秀一さんが気付きそうだけれど。
「今日は、久しぶりにそっちに行く」
「ホント?」
「あぁ。……期待したか?」
「そ、れは…どういう意味で、ですか」
「さぁな」
ちゅ、と再度額にキスをして、秀一さんがフッと笑う。果たしてこの含みのある言い方に、期待しない人はいるのだろうか。
+ + +
「あ、帰ってきた」
「あはは……」
ジョディさんと話していたコナン君が、私を見るなりそう言った。説教されたのか?と尋ねられてまぁそれなりに、と答えておく。あまり、された気はしないのだけれど。
「秀はまだ上?」
「はい。煙草吸ってから行くって言ってましたよ」
「身体に悪いわねぇ…」
「息抜きってことで、見逃してあげてください…」
私もたまに思いますけど、と言えばジョディさんも苦笑いをする。前に比べたら煙草は減っているような気がするけれど、どうだろうか。
「そういえば呉羽は今から帰るのか?」
「帰るよー。久しぶりにまともに夕ごはん作る」
「あら、じゃあ秀はそっちに行くのね」
「らしいです。いい加減来ないと私がまともなご飯食べてないの感づいてるんですかね…」
一人分だと作るの面倒だからつい手抜いちゃって。そういうと、ジョディさんが気持ちはわかるけど食べないと倒れるわよ、と先生みたいなことを言ったので苦笑いをする。先生だったのは、確かにそうなのだけれども。学校ではあまりお互い関わらないようにしていただけになんとも言えない。
「まぁでも気をつけなさいよ?最近この辺りも危ないんだから」
「あはは、それ通り魔事件のときみたいですね」
「ホントに気をつけなさいよ!?」
「はーい」
あのときのことを思い出したのか、ジョディさんがまじめに言う。そりゃあ病院で見送った人が怪我をして戻ってきたとなったらそりゃあなんとも言えない気分だろう。
今日の夕飯は何にしようか、と思いながら私は病院を後にした。
2016.06.09
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