「秀一さんのえっち、」
目を覚まして、ベッドに腰掛けていた秀一さんに言った。振り向いた秀一さんは笑みを浮かべながら私の頭を撫でて、身体は大丈夫か、と問われてコクリと頷く。結局化粧は落としてないまま寝たし抱かれっぱなしで身体はだるいしでツラいことに変わりはないのだけれど。
「…抱っこ」
小さく呟いてみれば、秀一さんは私の身体をシーツに包まれた状態のまま抱え上げる。甘やかすように額にキスをされて、大人しく彼に寄りかかれば小さく名前を呼ばれた。
「何も、されてないか」
「大丈夫ですよ。手を出されかけたぐらいです」
「…そうか、」
ぎゅ、っと確認するように抱き寄せられて、私も秀一さんに擦り寄る。心配をかけてしまったことは申し訳ないと思うけれど、ソレ以上にこうして心配してもらえることは大事にされているように感じて嬉しい。すまない、と耳元で囁くように謝罪をされて、私は秀一さんの頬に触れる。
「昼には、沖矢さんになるんですねぇ…」
「悪いな、こんな生活で」
「ううん。秀一さんが生きてくれてるなら、私はそれ以上はいらないです」
私の言葉に秀一さんが笑みを浮かべながら唇に触れる。まさか秀一さんに会うことになるなんて考えていなかっただけに、素直に嬉しくて。
「ふふっ、コナン君来ちゃいますよ?」
「来るまでなら、いいだろう?」
「キスまでなら、ですけどね」
視界に入る時計はもうすぐお昼になろうとしている。もうそんなに立たないうちに来るだろう。ここで秀一さんにスイッチが入れば、わりと悲惨なことになるような気がする。
秀一さんはもう一度、というように私に触れるだけのキスをして、甘やかすように私の頭を撫でる。
「呉羽が戻ってきたらいろいろと聞こうと思っていたが…どうでもよくなったな」
「私もちょっと怒られるかとは思って帰国しただけに肩透かしって感じですね」
「怒られたかったか?」
「意地悪、」
私が秀一さんに派手に怒られたことがあるわけではないけれど、多分怖いとは思う。頬を、叩かれたことならあるけれど。そんな他愛もない話をしていると、ふいに玄関のチャイムが鳴った。お昼まではもう少しあるけれど、コナン君が来たのだろうか。
「あ、秀一さん出ないほうがいいのか…」
「ボウヤだったらいいんだが、違った場合がな」
「秀一さんのシャツ借りますね」
こんな時間に来るコナン君以外のお客さんなんて、それこそ郵便物ぐらいだろうか。とりあえず隠すべきどころが隠れていたら大丈夫だろうか。床に置かれたままになっていた秀一さんのシャツを着て、玄関へと向かう。肩幅があるからかブカブカのそれは一枚でワンピースのように私の太ももまでを隠す。暗い色だから透けるようなことはないし、まぁ大丈夫だろう。そんなことを思い玄関の扉を開いて。
「っ、え…!」
相手の顔を見て、閉めた。
「待って待って待ってちょっと待って下さい私コナン君と思ってたんで服ちゃんと着てないんです着てきていいですか…!!」
「あ、うん…。そうしてもらえると…助かるかな…」
「すみませんすぐ着替えてきます…!!」
もしかして、携帯には着信があったのだろうか。何度も警察にはお世話になってるから住所は分かりきってるし、そもそも私一応だけれど誘拐されていたわけだしコナン君もあのとき警察には連絡したって言っていたからそりゃあ訪ねてきても不思議じゃない。携帯に出なかったとしたら、尚更。
バタバタと寝室に戻って、その騒々しさに秀一さんがどうかしたのか、と尋ねて。コナン君じゃなくて刑事さんだった、と言えば眉根にシワを寄せる。
「ちょっと着替えるんであっち向いててください!」
「…刑事に、その姿を見せたのか」
「不可抗力です!!あと秀一さん絶対この部屋から出たらダメですよ!?」
「あぁ。ボウヤは玄関からじゃなくて裏から入れた方がいいか」
「裏からっていうか窓からですかね…っと、コレでいいか」
秀一さんが私の方を見てないのを確認して、秀一さんのシャツを脱ぎ捨てて下着を身につける。とりあえず目の前にあった服を着て髪を整えて。今初めて気付いたけれどどうやら秀一さんが化粧を落としてくれたらしくすっぴんだ。絶対出たらダメですからね、と釘を差して洗面所に向かって顔を洗う。ホントは散々抱かれたからシャワーとか浴びたかったけどもうこの際言ってられるか。とりあえず見られるぐらいに整えて、再度玄関へと戻る。
「すみません、お待たせしました…!」
「いや…。むしろ今大丈夫かい…?」
「あ、はい!一人だしいいかなってあんな状態だったんで…」
「そ、そう…」
さすがに恋人でもない、そして未成年のあんな姿を見ることになるなんて、誰が想像しただろうか。おそらくは事情を聞きに来たのであろう高木刑事を見て、苦笑いを浮かべた。
2017.02.03
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