私がソファーに座って本を読んでいると、秀一さんがその隣に座った。そしてそのまま私の脚を枕にするように転がって、甘えるようにお腹に腕を回してきたのを見て私は秀一さんの頭を撫でる。
(可愛い、)
私の指を、秀一さんの髪がすり抜ける。ぎゅっと強めに腕を回されて、こうして甘えてくるのは珍しい、と思いつつ秀一さんを見れば秀一さんが顔を上げて、その顔はどこか不安そうな表情だ。
「秀一さん?」
「……名前を、」
「はい?」
「名前を、呼んでくれないか」
秀一さんのですか。私がそう尋ねれば、秀一さんはぎゅっと私に抱き着いて短く返事をした。小さな子どもが怖い夢を見て、お母さんに甘えるような状態だな、と秀一さんの名前を呼びながら頭を撫でて思うのと同時に、息を呑む。
「秀一さんも、私も、ここにいますよ」
「っ……」
ぎゅっ、と秀一さんの腕の力が強まって息を呑む音が聞こえた。あぁ、やっぱりそういうことなのかと頭を撫でて秀一さんに笑みを浮かべればちらりとこちらを見た秀一さんと視線が交わって、少し恥ずかしそうな秀一さんの表情にさらに頬が緩む。
「呉羽がよく俺にずるいと言うが、呉羽もずるいと思うぞ」
「ふふっ、秀一さんに似たんじゃないですか?」
「どうだかな、」
秀一さんが身じろいで、仰向けに転がる。名前を呼ばれて視線が交わって、名前を呼んでどうしたか尋ねれば秀一さんは自身の唇を指先で叩く。そこを叩くということはしろということで、どうしようかと一瞬考えたけれど今の状態ならしてあげられることは全てしてあげたい。
唇が触れて、視線を彷徨わせながら顔を上げれば今度は秀一さんからキスをされて、また唇が離れて視線が交わる。
「……たまに、自分が誰なのか分からなくなる」
「秀一さん、ですよ」
「呉羽に名前を呼ばれると、安心するな。自分が"赤井秀一"だと再認識できる」
目の前にある秀一さんの顔が安心するように笑みを浮かべる。どちらからともなくキスをして、秀一さんの手が私の頬を包む。その手に重ねるように私の手を置けば、唇に舌先が触れる。その舌を受け入れるように唇を開けば心地のいい苦みが構内に広がっていく。
「んっ……秀一、さ、」
「もっと、呼んでくれ」
「秀一さん、」
「あぁ」
キスをしながら、秀一さんが身体を起こす。後頭部を押さえられて、腰を引き寄せられて。そのまま秀一さんがソファーに転がって、私が秀一さんの身体の上に転がる。触れたり離れたりを繰り返しながらのそれはどちらからともなく熱を帯びて激しくなっていく。
「んんっ…ぁ。ん、!」
「はっ……呉羽、」
「秀一さ…ぁ、だめ、」
「駄目なら、噛んでいい」
そんなこと、出来るわけない。その言葉を発するよりも先にまた唇を塞がれて、深く口付られる。唇が離れる度に秀一さんの名前を呼んで、その度に秀一さんが微笑を浮かべて安心そうに私を見る。それだけで突然の行為を許してしまいそうになる私は秀一さんに甘いのだろうか。
2017.04.17
back