基本的に日本とアメリカでは文化が違って、クリスマスの過ごし方も違う。日本では恋人同士で過ごすことが多いけれど、アメリカでは家族と過ごすことが多いというのがそれに当たる。ただ、ここでひとつ問題。秀一さんは仕事上アメリカにいるし、秀吉さんは日本にいて恋人がいる以上恋人と過ごすことになるだろう。真純も学生であり日本にいるためメアリーさんといることになるだろうか。さて私は今年はどうしようか、と頭を抱えたのが12月に入った頃。去年は秀一さんがいたしまぁそれなりに恋人らしく過ごしたのではないだろうか。多分。
いっそ真純とメアリーさんと過ごそうか、と考えていた頃に家に届いた飛行機のチケット。私にそんなものを送ってくる人間なんて一人で、夏にも送ってきたなぁ、なんて思いながらそれを開封してまぁいろいろと準備をして過ごした後に私がアメリカに入国したのは半日ぐらい前だ。チケットが届いたときにイブに間に合うようにしたかったんだが、と申し訳なさそうに言った秀一さんの言葉を思い出して少しだけ笑ったのはここだけの話。まぁ何が言いたいかというと結局今日はクリスマスの25日で、今はアメリカの秀一さんの家にいるということで。
「その秀一さんが帰ってこないんですけど」
『俺にどうしろって言うんだよ』
「仕事が忙しいのは分かるけどこっちに来て会えないって悲しくならない!?」
『へいへい』
秀一さんが普段仕事に使うのとは別に用意されているパソコンは、ほぼ私専用と言っていいのではないだろうか。そのパソコンを開いて画面を繋げながら通話をするのは日本にいる工藤君だ。私と秀一さんの関係を知っている人間でこの日付、この時間帯に連絡を取っても大丈夫そうな人を消去法で選んだら工藤君になった。ジョディさんだって仕事かもしれないしそもそもアメリカではクリスマス。なんとなく申し訳ない。工藤君なら時差によって今の時間は26日の13時前といったところだろうか。アメリカでは25日の23時前だ。もう愚痴でも言わないとやってられない。
「いっそ玄関にチェーンでもしてやろうか…」
『いや、そこ赤井さんの家だろ』
「いいよね工藤君はどうせ昨日は毛利さんと会ってたんでしょ」
『うるせぇ』
おや図星。照れたのだろうか、ぶっきらぼうに返す工藤君の声を聞いて思わず笑みを零す。折角ずっと好きだった幼馴染とそういう関係になったんだ、楽しめ未成年。いっそ工藤君に連絡するんじゃなくて戸棚に置いてあるだろうお酒に手を出してもよかったな、と頬杖をついてパソコンの端に表示されている時間を見て息を吐く。もうクリスマスも残り一時間を切る時間になりそうだ。
「本当はさ、秀一さんがアメリカに戻るってなったときに高校辞めてもよかったんだけどね」
『それ、赤井さんが反対するだろ』
「されたされたー。せめて高校だけでも出ておけって。私秀一さんいないと生きていけないから卒業した後なんて決まってるんだけどね」
『赤井さんも逃がすつもりはなさそうだけどな』
「ふふふー。愛されてますよ?」
左手の薬指には、秀一さんから貰った指輪がある。貰った日から学校に行くとき以外はほとんど付けていると言っていいぐらいにずっとそこにある指輪は、もう私が秀一さんのものであるという証だ。
「やっぱり私秀一さん好きだなぁ…」
『惚気かよ』
たまにしか会えないんだから惚気ぐらい許してほしい。工藤君も何かあるなら聞くけど、と尋ねてみたけれど惚気るつもりはないのか呆れたようにため息をつかれた。ため息つきたいのはこっちだよ。
「秀一さんに会いたい」
『先に寝てたらいいだろ…』
「早く会いたい複雑な乙女心」
『……一応聞くけど、誰が乙女なんだ?』
「私だよ!!」
確かに年齢的には10代ではないのだけれど、それは工藤君は知らないことだし見逃してほしい。秀一さんが帰ってきたら思いっきり抱きついてキスしてもらうんだ。多分私が何も言わなくても秀一さんはしてくる気がするけど。
「秀一さん好き過ぎてしんどい」
『落ち着けよ……っと、あ』
「うん?」
「なんだボウヤか。切るぞ」
「うぇ!?」
ぶつり、と音を立てて容赦なく工藤君との通話が切られる。突然後ろから伸びてきた手は秀一さんで、いつ帰ってきたのか。恐らくはついさっきなのだろうけれど、ぱちぱちと瞬きをして秀一さんを見上げれば彼はふっ、と口角を上げて顎を持ち上げて私の唇を塞いだ。
「んっ…………なんで、」
「俺が好き過ぎてしんどい、か」
「っ〜〜!!聞いてたんですか……!?」
「聞こえてきたんだ。本当なら残り少ないクリスマスを楽しみたいところだが、可愛い恋人のそんなセリフを聞かされたら期待するぞ?」
元々、人のことを抱く気だったくせに。そう思うけどそれを言ったら酷くされてしまいそうなので言わずに自ら彼に触れるだけのキスをする。それだけで秀一さんに私の意図は伝わったのだろうか。腕を引かれて抱き寄せられて、熱っぽいキスをした。
2016.12.29
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