絶望を知った顔をしていた。

 
前々から有名で、恋とかじゃなくて人として気になっていた。一度だけ、同じクラスになったこともあるけども彼はもう覚えてないかもしれない。昔は確かに大人びていたけれど、歳相応の表情もすることもあったし何より今よりもずっと表情豊かだった。
いつからだろうか。彼から表情が消え、世界に絶望してしまったような顔をするようになったのは。
昔は小嶋君や円谷君、吉田さんと少年探偵団というものを組んで一緒にいたのをよく見た。いつのまにかそこに灰原さんが増えて、コナン君と灰原さんはまるで三人のことを見守る親のようだ、と思ったのを覚えている。時折灰原さんと話しているのは見るけれど、話している、というよりも言い合っているに近い気がして。残りの三人と一緒にいるのは、今や殆ど見なくなってしまった。

「じゃあ、江戸川君と結城さんが図書委員ね」

元々私は本を読むのが好きで、推理小説や歴史小説、恋愛小説など様々なものを読む。だから、図書委員に立候補した。でも、まさか江戸川君が一緒になるなんて微塵も考えていなくて。むしろ彼は何にも入らなさそうとか思っていた。でも、昔はよくシャーロック・ホームズを始めとする推理小説をよく読んでいたな、なんて思いだして妙に自分の中で納得する。

「あの、宜しくね…?」
「……………」

隣の席に座る江戸川くんへの言葉も虚しく、江戸川くんはふい、と無言で顔を逸らす。どうにも打ち解けるには厳しそうだな、と思いながら小さく息を吐いた。

(昔話しかけたりしたときは、普通だったのになぁ…)

ちらり、と彼を盗み見ても、面倒臭そうに前を見ている。
確かに彼は前から頭が良かった。それは今でも健在で。時折授業をサボっているのに、学年二位をキープしている。…一位は灰原さんである。

「じゃあ、図書委員は今日早速委員会があるから放課後図書館ね」

どうやら、放課後は委員会の活動になるようだ。江戸川君は少し面倒くさそうにしていた。

 + + +

委員会の活動内容は最初ということもあって、担当の日付を決める内容だった。担当の曜日の昼休みと放課後は、図書室にて管理をすることが主な活動内容だ。月一で図書だよりなるものを発行するらしいけれど、それは順々に回ってくる。ただ、クラスごとに回ってくるので暫くは日付がありそうだ。
チラリと江戸川君を盗み見ても反応なんてなくて。次の当番のときはちゃんと来てくれるのだろうか、なんて考える。昔に比べて少しだけ無愛想になったけれど、学年上位をキープしているのだから根は真面目だと思う。

(でも、授業はときどきいないんだっけ……)

江戸川君の推理力、というのだろうか。謎解きとかが得意なことは健在で、探偵と自ら名乗っているわけではないけれども警察の人から呼ばれて度々早退をしているのを見かける。
中学生の頃だっただろうか。身長も伸びて子どもから大人になる時期。彼が"かの高校生探偵工藤新一再来か"なんてタイトルで報道をされたのは。確かに遠い親戚で血縁関係はあるらしいけれど、江戸川君はどんな気持ちだったのだろうか。行方不明で、亡くなったとも噂される人に例えられるのは。

(神様がいるのなら、その神様は残酷だ)

その高校生探偵がただの行方不明なのか、本当に亡くなったのか、私は知らない。でも。誰にも行方がわからないからこそ行方不明で、火のないところに煙は立たない。誰かが人は記憶の中で生き続けると言った。でも、全てに忘れ去られたらどうなるのだろう。
 

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