きっと、お互いに依存しているんだ。

 
「随分と、悩んでるのね」
「まぁ、ね」

話しかけてきた人の顔も見ないで、適当に答える。私が頭を抱える原因は、机の上に置かれている一枚の紙。それには、進路希望調査と書かれている。

「哀はなんて書いたの?」
「大学名を書いただけよ。葵ほど、書くのに困るような進路じゃないもの」
「ですよねー…」

花嫁さんとか書いたら怒られるかな、と小さく呟けば別に間違いではないけど怒られるでしょうね、と言われた。確かにお前は一体いくつなんだ、と言われそうだ。

「無難に書くなら留学じゃないかしら?嘘ではないでしょう?」
「まぁ、ある意味永久就職なんだけどね」

江戸川君が学校を辞めて一年が立った。三年生になった私は進路調査を受けるような時期で、私の用紙はまっさらである。一応卒業後は押しかけ女房的な感じで江戸川君のところに行こうかとは思っているけれど学校にどう告げるかである。まさか卒業と同時に嫁に行くだなんて思ってもないだろう。
ちなみに、江戸川君は目に届く範囲にいろとか言ったのに自らロンドンに行った。それはもう容赦なくだ。まぁ、私と江戸川君はそのぐらいが丁度いいのだろうけれど。

「工藤君は、なんて言ってるの?」
「来るなら来いって。ただ突然来たらおっぽり出すってさ」
「傍にいろ、なんて言ってたのにね」
「ねー」

江戸川君が何を言ったか、というのは、私の前の席に座る哀にはほぼ全て筒抜けである。やっぱり江戸川君も何かとお世話になっているし状況を知っている人間とはそれなりに連絡を取るつもりらしい。多分、私の方が取るんだろうけれど。

「でも、素直に結婚って書いても面白そうね」
「怒られる気がするけど」
「私には関係ないもの」

ですよね!と大声で言いたくなったのを抑えつつ用紙を眺める。進路希望調査は、第三希望まで書くところがある。哀に全て埋めたのかを聞けば、何当たり前のこと言ってるの?というような顔をされたのでやっぱり全部埋めるものなのだろう。

「んー…」

机の上に無造作に置かれていたシャープペンシルを手にとって、第一希望から第三希望まで埋める。上から埋められていく文字を見た哀が、呆れたように息を吐いた。結局そうなるのね、という声はこの際無視だ。

「それ、提出するの?」
「明日、ね。今なら江戸川君電話に出るだろうし、進路報告だけはしとくよ」
「…そう」

また明日ね、と言って哀に手を振ってポケットから携帯を取り出す。人があまりいない廊下を歩きながら携帯を取り出して、日本とは違って今はまだ午前中である江戸川君へと繋げる。数コールして出たその相手は、それなりに機嫌は良さそうだ。というか、良くないと困る。暇なのか、というぐらいに連絡をしてくるのだから。

「進路希望調査の第一希望に結婚って書いたからさ、嫁に貰ってくれない?」

返ってくる答えを知りながらそんなことを聞く私は、そうとう性格が悪いのだろう。彼の答えに耳を傾けながら、私は口角を上げた。

2015.08.26
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