空は藍色に滲んでいた。

 
「あら、まだするの?」
「うーん…なんか、あともう少しで分かりそうな気がするんですよね」
「そう…。無理したら駄目よ?」
「有難う御座います」

組織とFBI、二か所での仕事に慣れた頃。相変わらず記憶は戻らないけれど、業務そのものにはそれなりに信頼というものがあるように思えた。だからこそ、動くならそろそろだろうか。
ジョディさんが事務所から出たのを見て、小さく息を吐く。あと少しで分かりそう、なんて嘘。私は、答えを知ってる。

(問題は、それをどう繋げるかよね……)

組織でいらなくなった末端の人間は、FBIを使って始末する。あたかも操作を進めていく上で手がかりを見つけたかのようにして、そこから始末したい人間へと繋げる。最初はそれこそ私がヒントのようなものを提示するだけでもいい。あとは、勘のいい人が答えへと導く。その回数を重ねていくうちに潜入している身の私は信頼を得られるし組織からすれば面倒な末端の処理を出来る。勿論、FBIで始末するからにはソイツからは組織の詳細は語られない。語られても、FBIでも既に知られている情報ということだ。

「どうしますかねぇ……」

答えを知っていても、そこに辿りつくまでの道のりはキチンと用意しておかなければならない。末端と言えども組織の人間だ。基本的に痕跡なんて残って無いに等しい。それに、日本で起きたことは基本的に日本警察の管轄だ。FBIど言えどもそう簡単に捜査資料を見せてくれるわけがない。
開いていた資料を閉じて、私は息を吐いた。

 + + +

「狙われてる議員がいる?」
「えぇ。まだ完全に決まったわけじゃないけれど…。明日は実琴も私と一緒にその議員を警護してもらおうと思って」

ただし、議員には絶対にバレないように、と釘を刺すようにジョディが私に言った。今回は私が道筋を立てようとしていたものとは完全に別件で、何かあったときの為に拳銃も持って行った方がいい、とのことだ。勿論、サイレンサー付きで。

「その議員、組織と何か裏で繋がりがあったんですか?」
「恐らく、ね。」

そんなところまで組織と繋がっている人間がいるのか。ただ、今回は過去系みたいだけれど。
組織を抜けようとする人間には容赦はしないと、ジンから聞いたことがある。いつ極秘情報を話してしまうか分からないからだろうか。恐らく私も、記憶が無いけれど保護したのはそういうことなのだろう。

「私、記憶なくしてから銃を殆ど使ってないんですけど大丈夫ですかね」
「大丈夫よ。この前一応撃ったでしょう?」
「一応、ですけど。」

銃は、組織の方でも何回かは撃った。撃ったときの反動とかには慣れてきたけれど、今の私は人に銃口を向けたことはない。たとえそれが人を殺めるとしてじゃなくてもだ。前の私はどうだったかは分からないけれど、銃の腕に自信なんてものはない。

「やっぱり、不安?」
「初めてのこと、ですから。やっぱり少しは…」

自信の手を見て、思う。私の手は、護る手と殺める手、どちらなのだろうか。時折、罪悪感に苛まれることがある。

(いっそ、記憶を思い出せたら楽になれるのかな…)

―どうして"私"は、あんな組織に入ったの?

心のなかで問いかけても、返事は来なかった。

2016.02.13
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