脚が赤色に染まっていた。
「もしも私がFBIの人間として仕事をしてるときにジンと敵として会ったら、貴方は私に銃を向けるの?」
フッ、とジンが息を吐く。煙草を吸っていて吐かれたソレは真っ白で、やがて消えていく。彼は短くなった煙草を灰皿に押し付けるかのようにして火を消して、私の頬に触れた。
「撃たれたく、ないのか」
「そういう場合は仕方が無いと思うわ。仮に私が生きてても、貴方を恨んだりしない」
「お前は、俺を撃つか?」
「どうかしら。わざと外してみるのもありかもしれないわね」
貴方の顔に傷が入るの、勿体ないじゃない?そう彼に言うと、彼は一瞬だけ動きを止めた。けれど、次の瞬間には私はベッドに押し倒されていた。
「…覚えとけ。敵として会ったら、そこに情けはいらねぇ」
「じゃあ、貴方も私を殺してね?私が、何かを吐き出してしまう前に」
どこか悲しげな顔をする彼に、手を伸ばす。彼の頬の傷に触れれば、少しだけ顔を顰めた。一瞬傷が痛んだのだろうか、と思ったけれど、別にそういうわけではないらしい。何かを思い出すように、彼は私の頬に触れる。
「どうかしたの?」
「……記憶は、戻ってないのか」
「残念ながら。戻ったら、どうして私がここにいるようになったかも、分かりそうなだけれど、」
「…戻らなくて、いい。お前は、そのままでいろ」
どういう、意味かしら。そう彼に尋ねようとしたけれど、私の唇は言葉を紡ぐことが出来なくされていた。唇に触れられる温もりを感じながら、彼の背へと腕を回した。
+ + +
「実琴っ!!」
ジョディさんの悲鳴にも似た声が、耳に響いた。脚に痛みを感じて、私はその場に崩れ落ちる。見れば、脚からは血が流れていた。
(一体、どこから……)
ズキズキと痛む脚は、一人で歩くには少しばかり難しそうだ。突然のことに慌てているジョディさんに、大丈夫だから、と言えば安心したように息を吐く。脚を掠めた弾丸は、後ろから。そして、上から。
気持ちを落ち着かせるように息を吐いて、狙撃場所となりそうなところを探す。
「あ…………」
真っ先に目に入ったのは、風に揺れる銀色。見間違えない。見間違えるわけが、ない。銃を持っているのは貴方ではないのに、何故か私は銃を向ける貴方の姿がちらついて。
「っ、あ…………」
バラバラと、記憶が断片的に頭の中を流れる。それは壊れた蛇口のように止まることを知らなくて、記憶が、私を埋め尽くしていく。
「実琴っ!!!」
ジョディの悲鳴のような声を聞きながら、私は意識を手放した
2016.02.15
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