Marguerite movie

落ちる、落とす

 
いろんなところに身体を打ちつけながら、落ちた。大きな音と同時に、身体に衝撃が走る。痛そうとは思っていたけれど、実際に落ちてみるとなかなかの痛さだ。

「呉羽っ…おい…!呉羽…!!」
「っ…大丈夫です、」
「そんなわけっ…!」

ズキズキと今まで感じたことがないぐらいの痛みを堪えながら、身体を無理矢理起こす。私に声をかける秀一さんは焦ったような顔をしていて、そんな顔を見れたのだからちょっと得した気分だ。けれど、それよりもすることがある。私は秀一さんの言葉を遮る為に触れるだけのキスをして、笑う。

「大丈夫です。だから、ね?」
「……分かった、」

走ってその場から去る秀一さんを見送って、またごろりと転がる。全身が、痛い。でも、骨は大丈夫だろう。さすがに秀一さんを庇って落ちるのは、なかなかの衝撃だった。

(あぁ、工藤君に連絡しないと)

もう一度身体を起こして、立ち上がる。痛いけれど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。近くに落ちていた携帯を拾って、秀一さんが向かった方へ向かいながら工藤君へと電話をかける。それはすぐに繋がって、雑音と共に工藤君の声がした。

「工藤君、上!私と赤井さん、観覧車内部の上にいるから…!」
『分かった!!』

私の言葉で、全てを察してくれたのだろう。ブツリと切られて、私はほっと息を吐く。そして、観覧車の上での殴り合いより少しばかりヒートアップしたように見える殴り合いをしている二人に視線を移す。

(そろそろ、止めないと……)

さすがにヒートアップし過ぎている。第二ラウンドといきましょうか、と言った安室さんと少しよろめいた秀一さんの間に、割って入る。同時に、拳を作って安室さんの目の前へと勢い良く突き出す。

「さすがに、そろそろ頭冷やしましょうよ」

こんなことしてる場合じゃないでしょう。私がそういうのと同時に、下から赤井さんを呼ぶコナン君の声が聞こえてきた。

「大変なんだ!力を貸して!奴ら、キュラソーの奪還に失敗したら爆弾でこの観覧車ごと全て吹き飛ばすつもりだよ!!」

私は小さく息を吐いて、拳を下ろす。秀一さんを見れば拳を下ろしていて、安室さんに向けて首を横に振る。今はこんなことをしている場合じゃないと、分かってくれたのだろう。

「お願いだ!そこにいるなら手を貸して!奴らが仕掛けてくる前に爆弾を解除しないと大変なことに――」

ふぅ、と安室さんが息を吐いた音が聞こえた。安室さんもようやく秀一さんと殴り合いをしている場合じゃないと悟ったらしい。くるりと私たちに背を向けてフェンスから顔を出して、本当かいコナン君、と下にいるコナン君に声をかける。
その時。あぁ、またこれからひと波乱か、と私が息を吐くのと同時に、秀一さんに腕を掴まれた。

「秀一さん?」
「背中、大丈夫か?」
「え?あぁ…大丈夫ですよ。動けますしね」
「すまない、」

私が勝手にしたことですから。そう言って、秀一さんの口元の血をハンカチで拭う。少しばかり口の中を切っただけで、大きな怪我とかはしてないらしくほっとして息を吐いてからコナン君の言葉へと耳を傾ける。爆弾が仕掛けられているのは、車軸とホイールの間。そして遠隔操作でいつ爆発するかは分からない、とのことだ。その言葉に、わかった、と安室さんがコナン君に返事をする。それを聞いた秀一さんが私の腕を再度掴んで引き寄せる。

「きゃっ…!?」

突然の浮遊感に、悲鳴を上げる。けれど、秀一さんは気にした様子もなく歩き始める。安室さんも、FBIとすぐに行く、とコナン君に告げて続けるように歩き始めた。

「あの、歩けます!私歩けますからっ…!」
「まだ背中が痛むんだろう。無茶をするな」
「呉羽さん、怪我してるんですか?」
「観覧車から落ちるときに俺を庇ってな」
「怪我ってほどでもないです!それに痛くないですって!歩けます!」

ジタジタともがいてみるけれど、秀一さんの力に私の力で敵うわけがない。秀一さんは呆れたように小さく息を吐いて、階段の前で脚を止める。同時に、突然秀一さんの腕の力が緩む。がくん、と一気に落ちそうになるその感覚に私は小さく悲鳴を上げて秀一さんへとしがみついた。

「どうした、降りるんじゃなかったのか」
「どっちかっていうと落とすですそれは…!!」
「じゃあこのままでいろ」

カンカンカン、と足音を立てて階段を降り始める秀一さんに、私はどうしていいか分からずに息を吐いた。

2016.05.
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