夢見た未来で午前6時
*終われなかった世界で午前7時の続き
ぱちり、と目を覚ますといつの間にか私は抱きしめられるようにして寝ていたことに気付く。私を抱きしめるようにして眠るこの男が、1人でもなんてことないような顔をするくせに見た目に似合わず恋人を甘やかすのが好きだと知ったのはつい最近だ。
(…あぁ、そっか)
彼の顔が、見慣れた顔と違った。そういえば、昨日は久しぶりに変装を解いたんだったっけ。そう思いながら、彼の顔に触れる。日本に来て、初めて見た久しぶりの彼の顔。前に見たのはアメリカで、そこを出るときにはもう二度と会うことは無いだろうと思っていたのに不思議なものだ。
さらり、と私の指の間を彼の髪がすり抜ける。彼はどうやら結構深く眠っているらしく、規則正しい寝息を立てるだけで起きる気配は無い。
(ホント、憎たらしい…)
彼を想いながら死のうとして、私は結局彼に生かされている。全て、彼の掌の上で動かされていた気分だ。結局、許してしまうのだけれど。
ちゅ、と軽くリップ音をさせながら彼の額にキスをする。なんとなく、してはいけないことをしたような気分になりつつ、頬を緩める。寝顔は、子どもみたいだ。
(シャワーでも浴びようかな…)
昨日はなかなか離してもらえなくて結局半ば気絶するように眠った。彼が沖矢として初めてあったときも思ったけれど、この見た目でどこにそんな体力があるのだろう。拳銃とか使う仕事だから、そういうことで必然的についた体力なのかもしれないけれど。
意識の無い秀一の身体はゆっくりと動かせば簡単に腕の中から逃れられて、とりあえずシーツに包まって身体を隠す。辺りに散らばっている服を取ろうとベッドの上から手を伸ばしたとき。
「っきゃ…」
私の口から、小さく悲鳴が漏れる。突然後ろから引っ張られて、私はそのまま後ろへと倒れる。私の腕を引いたのは秀一で、後ろへと倒れた、と思ったけれど倒れきれずに座る秀一に寄り掛かるようになった。
「もう少し、襲ってくれることを期待したんだがな」
「お、起きてたの…?」
「どうだろうな」
フッ、と口角を上げて、秀一が私にキスをする。軽く触れるだけだろう、と思っていれば油断していた私の口内に秀一の舌が入ってくる。朝には似合わないそれに秀一の身体を押せば、逃がすまいとするように私の身体を抱き寄せる腕の力を強める。
「っ、んん……はっ、ちょ、っと秀一、」
「何だ?まだ、足りなかったか?」
「っバカじゃないの!」
秀一の腕の中で暴れるようにもがけば、小さい子どもをあやすように秀一が私の頭を撫でながら悪かった、なんて素直に謝ってくる。そんなこと言われたら、許すしかないじゃない。小さく息を吐いて、甘えるように寄りかかる。
「秀一なんて、ホントにあの峠で爆発されればよかったのに…」
「もしされてたら、どうせ後を追ってくれるんだろう?」
「追ってやるわよ。知ってるでしょ?」
私の後追い自殺を止めたのは、他でもない秀一だ。秀一が本当に死んだ後の行動なんて、考えなくてもわかるだろう。あの毒薬は、今は秀一が所持しているけれども秀一がいなくなった後は探せばいいだけの話。私は、秀一がいなくなった世界で生きるつもりなんてないのだ。
「俺は、愛されてるな」
「見放される方が良かったの?」
「それは困るな…。やっと、手に入れたんだ」
秀一が、私の額にキスをする。多分、お互いに一歩進めなくて気持ちを置き去りにしていたのはどちらも同じだった。どうしたらいいのか分からなくて、最悪の結末になりかけていたのではないだろうか。
「好きよ、秀一」
「あぁ、知ってる」
フッ、と笑いながら私の頬にキスをする秀一に、今度は私が秀一の頬に口付ける。そのまま私は秀一の手によってベッドに押し倒されて、結局こうなってしまうことに内心苦笑いをしつつ秀一に向けて腕を伸ばした。
2016.02.11