リバータウン




ココヤシ村を出発した麦藁の一味の一行は食料・物資調達のため、河の町・リバータウンに訪れていた。

「随分賑やかな町だなぁーここは!」
「ちょっとあんた達!あんまり走ってどっか行かないで!ここには長居する予定なんてないんだから!」

香ばしい香りに誘われ走り出そうとしたルフィとウソップに向かい、ナミはあわてて声をあげる。
文句を言おうものなら問答無用で殴られるということをこの短い付き合いで理解していたウソップは、ウズウズしているルフィを追いかけることを止め、静かにナミの後ろに下がっていった。

「リバータウンっつったらイーストブルーの流通の要みてぇなもんだからな。グランドラインから入った品と、イーストブルーで集まった品のほとんどがここに集まるって言われてる。」

賑やかなのはそのおかげだ、とタバコに火をつけ船長の感想に言葉をかけたサンジの手には、走り出そうとした二人同様すでにナミの買った幾つかの荷物が持たされている。

「詳しいなぁサンジ、来たことあんのか?」
「ま、バラティエの買い出しでな。それに…」

タバコの煙を吐き出しつつ上げたサンジの片目はハートの形。
ウソップが「あ、」と思った時にはもうすでに…

「キレーなレディも沢山いるんだぜぇー!」

タバコの煙をハートに飛ばしながら気持ち悪い笑みを浮かべるサンジが出来上がっていた。
メロリンメロリンとハートを飛ばすサンジと、飯屋を嗅覚だけで探そうとする船長の二人に、ウソップとナミは同時にため息をついた。

「待ってくれー!!!」

ガシャンという音と共に、泣きそうな男の声が響いた。四人が顔を見合せ声の方に顔を向けると鍛冶屋の店主と思われる男が刀を持った男の足にすがり付いている。

「何だぁ?」
「関わっちゃだめよあんた達、関わるなら私から離れたところでやって。」
「歪みねえな、お前。」
「!おいおいあれ、ちょっとまずくねえか…」

サンジの言葉にナミとウソップが鍛冶屋へ視線を戻すと、すがり付いていた店主の顔を男が思い切り蹴り飛ばした後だった。盗んだのか、奪ったのかわからない鍛冶屋のものであろう刀を鞘から抜いたその男は、店主に怒鳴りながら近づいていく。

「うるせえ!この刀気に入ったから貰ってやるっつってんだろうが!黙って渡してりゃいいんだよ!」
「え、うそ!」
「ックソ…!」

「…ねえ、」

「!?」

斬られる!とその場にいた誰もが思った瞬間に、女の声が割り込んだ。
突然聞こえたその声に、男だけではなく一部始終を目撃していた全員の視線が集まった。視線を集めて尚男を見据えたその女は、ウェーブがかったブロンドヘアを揺らしながら店主と男に近づいた。

「ちょ…おいおい大丈夫かよあの女…」
「ちょっとルフィ、あんた止めて…!」

シャボン玉…?と、場違いなその物体を目にしたナミの心配は、次の瞬間杞憂に終わることとなる。

「なんだぁテメェ…文句あんならテメェから…」

叩き斬ってやる、と続いたはずの言葉は途切れ、バチィィインという音が響き渡った次の瞬間には、吹き飛ばされた男が女の足元に倒れた。
目の前で見ていた店主も、離れた場所で一部始終を見ていた四人も、突然の事に頭が付いていかない。
ただ全員同じ光景を見ていたのだ。
吹き飛ばされた反対方向から、シャボン玉が男に触れた瞬間を。

「おんもしれえ奴が居るなぁ…!」

目撃していた者達が唖然とする中ウキウキと発されたその言葉に、彼のクルー達は「ああ、またか…」と己がこの男の船に乗せられた時の事を思い浮かべため息を溢した。