「ま…迷いに迷って…。」
怖い顔でため息をつきながらも、声色は優しい幼馴染は相変わらず私を上手に甘やかしてくれるようだ。自分の作戦室じゃあすぐに見つかっちゃうかもと思った私は本部についてすぐに荒船隊の作戦室に駆け込んだ。中には先に学校が終わっていたてっちゃんがランク戦のログを見ていて、半泣きの私を見てあきれたようにため息をつきながら招き入れてくれた。
「…ごめんね、てっちゃん。」
「いい、今日はスナイパーの合同訓練で穂刈と半崎いねえし、シフトも入ってねえから加賀美は来ないしな。
で、俺はいたほうがいいのか?」
「…話、聞いてくれる?」
だと思った、と言いながら渡してくれたマグカップには、私の好きなミルクティーが入っていた。牛乳が多めに入ったそれは、私の好きな味で心が落ち着く気がした。
◆ ◇ ◆
「で、本部まで逃げてきたと…。」
「う…はい。」
「はあ、感情で動けるのはお前の欠点でもあるってさんざん言ってんだろ。」
米屋にしっかりチャリ返せよ、と言うてっちゃんに視線を向けた。マグカップをテーブルに置いたてっちゃんは、ケータイを確認するとすぐに私に問いかけた。
「お前は?」
「?」
「カゲがどうとかじゃなくて、お前はどうしたいんだ。」
この意思の強い瞳に見つめられると昔から私は、ごまかすことができなくなる。まっすぐに私を見つめる瞳は厳しいけれど、一等私を見て、心配してくれていることを知っているからだ。
てっちゃんと私の関係はむかしから変わらない。友達以上の恋人未満。幼馴染であって、親友であって、理解者であって。
じゃあカゲは?
てっちゃんよりもずっと付き合いは短い。けれど私はあっという間に彼にひかれてた。
あの日近くで見たきれいな金色も、不器用な手つきも、察しがよくて身内には甘いところも、
『太陽。』
私の名前を呼んでくれる、優しい声も。
「…わたしね、」
カゲが大好きなの、と告げたら、目元にたまっていた熱が、次から次へとあふれ出した。
「見つけるだけでうれしくて、隣にいると幸せで苦しくて、どんどん好きになっていって。
…もっとずっと近くにいれたらいいのにって、近頃そんなことばっかり考えてる。
ねえ、てっちゃん。」
てっちゃんは相変わらず真っ直ぐ私を見つめながら、黙って聞いてくれている。
私もまっすぐみつめるけれど、目からあふれる熱がどうしても止められなくて、ほとんどぼやけてしまっていた。
「わたし、めいわくにならないかなあ?」
きっと今の私はひどい顔だ。とうとう嗚咽まで出てきてしまった。てっちゃんはいつもの仕方がないないなあって顔で笑って、私の頭をなでると、作戦室の扉のほうへ向かっていった。
「それはちゃんと本人に確認してみろよ。」
片付いたら連絡しろよ、と扉の向こうに立っていた人の肩をたたいて出て行ってしまったてっちゃんと入れ替わりに入ってきたのは、会いたかったけど会いたくなかったその人で。
「…俺も逃げねえから、お前も逃げんな。」
なんて言われてしまえば、私は素直に頷くことしかできなかった。
◆ ◇ ◆
何分経ったんだろう…。
作戦室に入るなり、私の隣にどかりと座って黙ってしまったカゲをちらりと見つめる。
てっちゃんに確認してみろと言われたものの、怖くてためらってしまってなかなか話し出すことができない。
というかどこから聞いていたんだろう。何も言わないってことはやっぱり迷惑だったんじゃ…。
ぐるぐる回る考えに目元がまた熱くなってきた。情けない、泣くな泣くな!
「あ、あのね、「悪い、」!」
わ、悪いって?やっぱりわたし、迷惑だってこと?カゲは聞いてたの?
目元にたまっていた熱がぼろりとこぼれた。
「!?おい太陽、」
「、っ…。」
我慢できずにぼろぼろと大粒の熱がどんどんこぼれていく。今日の私はずっと泣いているから、きっと明日は目元がぼってりはれちゃうなあなんて頭の中はやけに冷静だった。
「っ、いや、そうじゃねえ、…くっそ、」
「…?」
「あー!もういい!」
突然がしがしと頭をかきむしったカゲに驚いていたら、そのままガシリと両肩を掴まれた。
びっくりして涙が止まった、と思っていれば、そのまま勢いよく顔が近づき、がぶりと食べられた。
「(??…え、たべられた?…いや、たべられ…てる…?…え?)」
少しの間そのままくっついていたカゲは満足したのか、肩に置いた手はそのままに、静かに離れて行った。
何が起こったのか整理のついていない私は、離れて行ったカゲとばっちり目が合った瞬間に、ようやっと理解が追いついた。
「!!?え、いま、き…、え!?」
「迷惑なんかじゃねえよ。」
「!」
まっすぐに私を見つめる金色の瞳は相変わらず綺麗で、優しい色だと思った。
もう一度、迷惑じゃねえ。と言ってくれたカゲの声も優しくて、止まったはずの涙がまたポロポロとこぼれてきた。
「お前がいつも向けてくる感情はくすぐってえけど居心地がいい。あんまりにもやわっこいの向けてきやがるから、気が緩みそうで困る。カッコが付かなくなりそうになんだよ。」
不機嫌そうな顔をしながらも、わたしの目元を拭う手はやっぱり不器用だけど優しい。
「好きなやつの前で、見栄ぐらいはらせろ。」
キスまでしてきたくせに、顔を逸らすカゲがなんだかかわいく見えてきて、涙が止まらないくせに思わず笑ってしまった。
「見栄なんてはらなくても、私、ずっと隣にいたいくらい、カゲが大好きだよ。」
ほっぺに延ばされた手をぎゅっと握って笑えば、今度はゆっくりときれいな金色が近づいて、触れるだけのキスをした。
「知ってる。」
なんだかおかしくなってクスクスと笑えばあきれたようにため息をつかれたけれど、変わらず見つめてくる優しい瞳が愛しくて、思い切り抱き着いた。
ときめけ恋心
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