辛気くさくて面倒そうなのが第一印象。
今の関係になってから、人が寝てるソファーの後ろでため息ばっかついてりゃそうなるだろって言ったら顔を赤くして叩いてきたが、刺さる感情はやわらかいもんばっかりだったから、悪い気はしてねえんだと思う。
偶然持ってた飴をやったら懐かれ、ちょくちょく話をするようになった。
会うたびにアイツから向けられる感情がどんどんでかくなってく事に、不思議と悪い気はしなかった。
「あ?太陽?」
「ああ、この間荒船に紹介されたんだ。カゲと仲が良いって聞いたからどんな人なのか聞いてみようかとおもって。」
「どんなやつって…」
鋼からそう聞かれたときも、面倒くさいやつってのが一番最初に浮かんでた。くそ真面目なアイツはごちゃごちゃモノを考えすぎることが多い。挙げ句の果てにはキャパが足りなくなって泣き出す始末。
でもそれが悪い訳じゃない。
「真面目すぎて一人で辛気くさくなりやがるから、手がかかる。」
「あれ、嫌いなのか?」
「…いや、アイツは…」
『カゲ!』
「(…嫌いじゃねえよ、じゃあなんだ?なんでもやもやしてんだよ。)」
「カゲ?」
「…手がかかる、ダチだ。」
◆ ◇ ◆
太陽、俺のとこの作戦室に来た。どうする?
荒船からのメッセージにすぐ行くと返事を打って本部に急いだ。泣きそうな顔でチャリを引ったくっていったアイツは、多分またごちゃごちゃ余計なことを考えてるんだろう。馬鹿がつくほど真面目なアイツは、大方俺が嫌な思いをしないよう自分の気持ちは明かさないようにって考えてるんだろう。溜め込むのが苦手なくせに、一丁前に隠そうとするってなんだよ。俺はまだなんも言ってねえだろ!
ムカムカしながら荒船隊の作戦室の側まで着くと、中の話し声が聞こえてきた。太陽と荒船だ。
「お前は?」
「?」
「カゲがどうとかじゃなくて、お前はどうしたいんだ。」
「…わたしね、」
カゲが大好きなの、と太陽が告げた。
知ってるよ、んなことずっと前から。
「見つけるだけでうれしくて、隣にいると幸せで苦しくて、どんどん好きになっていって。」
それも知ってる、会うたびにどんどん遠慮なくぶっ刺してくる女なんてお前ぐらいだからな。痛くねえし、悪い気はしねえからなんも言わなかったんだよ。
「…もっとずっと近くにいれたらいいのにって、近頃そんなことばっかり考えてる。」
悪かったよ、避けてて。お前に言ったら泣くかもしれないって思ったんだよ。
「わたし、めいわくにならないかなあ?」
…結局泣かしてんじゃねえか。知ってたんなら言やよかったんだ、悩ませる前に、泣かせる前に、
好きだって。
「それはちゃんと本人に確認してみろよ。」
片付いたら連絡しろよ、と俺の肩をたたいて出て行った荒船と入れ替わりに入った、先には思った通りぼろぼろ泣いたのか、目もとを赤く腫らした太陽がいた。
言わねえと伝わらねえだろ。言葉にしてやらねえと、こいつはまたどっかに逃げて泣くぞ。
「…俺も逃げねえから、お前も逃げんな。」
素直に頷いた太陽を確認して、作戦室に入った。