私には大切な人が二人いる。





「摎姉様ー!」

「晶霞、どうしたの?」

「王騎様と共に戦場に行かれると聞きました、その前にどうしてもお会いしたかったのです」


小さい頃から修行を積んでいた姉様は武芸に秀で、王騎様の側近として確かな存在感を放っていた。そしてとても美しく、強い人だった。姉様と話していると王騎様が馬に乗ってやって来た。


「貴女達は仲が良いですねェ」

「王騎様!」


王騎様を見て姉様は嬉しそうに笑っている。私はお二人が大好きだった。
姉様は私と同じく元々王騎様にお仕えしていた召使いだったが、その才能を見込まれて軍に入り、沢山の武功を挙げていた。私も姉様や王騎様と剣の稽古をしているがとても及ばない。


「王騎様、摎姉様、どうかご武運を」


お二人と戦で活躍するのが私の夢だった。王騎様達が戦に行くと少しでも追い付けるように毎日毎日剣を振るった。残った兵や軍長達にも稽古をつけてもらいながら少しずつ剣を扱えるようになっていった。




姉様には目標があった、城を百個取るというとても大きなものだった。私が王騎様にお仕えしだしてからしばらく経って、姉様は自分が強くなりたい理由を教えてくれた。


『城を百個取ったら王騎様の妻になれるの!』


とても素敵な約束。私の憧れのお二人が夫婦になるだなんて。私は姉様の大きな目標を影ながらずっと応援していた。







「今日は晶霞の剣を見てあげましょう」

「はい!」


秦の黒い怪鳥と呼ばれる王騎様はとてもお忙しく、稽古をつけていただける機会は滅多に無い。だから私はいつも全力でぶつかっていった。王騎様の斬撃は手加減があっても重く、私では受け止めるのがやっとだったがそれでも渾身の力でそれを薙ぎ払い何度も切りかかる様を見て、王騎は嬉しそうにしておられた。


「晶霞は力の使い方がとても上手い、持って生まれた才能ですね。身体の筋や関節が相手の力を殺しています。並大抵の武将は貴女相手ではなかなか剣を振り抜くことも出来ないでしょうねェ」


そう言われると私はとても喜んで、一番に姉様に報告した。姉様も一緒に喜んでくれて、いつか一緒に戦いたいねと未来を語った。
そんな姉様はいつからか仮面を着けて戦うようになった。その頃から戦い方は苛烈さを増し、姉様の武勇はその名前と共に中華全土に知られていった。仮面の訳も、時折見せる物憂げな表情の意味も私には分からなかったが、いつか私にも話してくれたらと不甲斐無い自分の修行に励んだ。







「これより摎を秦国将軍に任命する!」


やがて武功が認められ、姉様は将軍になった。王騎様の計らいで私もその任命式に参加出来る事になった。
姉様は皆の眼前で跪き、恭しく剣を受けるとその大きな目から沢山の涙を流していた。そして初めて拝見した大王様もそれはそれは嬉しそうに涙を流していらっしゃった。その光景はあまりにも美しく、いつまでも鮮明に私の胸の中に残る事になる。