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手に持っていた本を閉じ、窓の外を見ると、まるでお伽話にでも出てきそうな建物が目に入った。
「あれがマトリカリア学園……」
マトリカリア学園は僕、シャルル・ローズクォーツが今日から通う学園だ。
噂に聞いていた通り、どこか神秘的でなんとも近寄り難い雰囲気だ。
けれども僕にはその姿がとても魅力的に映ったのだ。
マトリカリア学園は全寮制で、在籍する三年間は寮で暮らすことになる。そこも含め何もかもこの学園は僕には好都合だった。
ただ一点だけ問題を挙げるとするならば、この学園は兄の母校であるということ。
けれども僕はこの学園を選んだ。
兄は兄で、僕は僕であること。
それを自分自身へ証明するために。
しかしあの家に居続ける限り僕はずっと兄と比べ続けられるのだろう。
周囲からの評価ばかりを気にして前に進めずにいる僕を、この学園は手を差し伸べ、導いてくれるのだろうか。
この学園とともに僕は前に進めるのだろうか。
◇
「広すぎる……」
事前に学園から配布された地図を片手に今日から入寮する予定のジャスミン寮を探してみるがそれらしき建物が一向に見当たらない。歩いても歩いても森が続いて、自分がどこにいるのかさえさっぱりわからない。
「もしかして迷った……いや僕がそんなミスをするわけ」
改めて手に持っていた地図を凝視してみるがやはり現在地さえもわからない。
そもそもこの地図もそうだが、こんなに広い森に看板のひとつもないなんてあまりにも不親切ではないだろうか。
それともこの地図一枚で無事に辿り着けるのか試されているのだろうか。
呆然と立ち尽くしていると後ろから人の足音が聞こえてきた。
もしかしたら僕と同じく道に迷ったのかもしれない。他人に助けを求めるなんて少々気が引けるが、仕方ない。
そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「あの、オレ新入生なんですけど、キャットミント寮の場所がわからなくて教えてほしいんですけど……」
振り返るとそこにはブロンドの髪を1つに束ね、アメジスト色の瞳をした少年が立っていた。
これが僕とエディーの最初の出会いだった。
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