cottage


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「あの、オレ新入生なんですけど、キャットミント寮の場所がわからなくて教えてほしいんですけど……」

 振り返るとそこにはブロンドの髪を1つに束ね、アメジスト色の瞳をした少年が立っていた。
 
「えっと……」
 寮の場所を教えてほしいと声をかけられたものの、自分の現在地さえわからない状況だった。
 ここで自分の変なプライドが邪魔をしなければ「僕も迷子だから近くに先生や上級生がいないか一緒に探そう」とか気の利いた返答ができたはずだった。
 
 しかし僕のプライドがそれを許さなかった。

「他人に頼る前にまず自分が今どこにいるのかもう少し考えるべきじゃないのか?」

 道を聞かれただけでこんな返答をするやつなんて僕以外に存在するのだろうか。
 自分だって他人に頼ろうとしていたはずなのに……。
 
 しまった……と思い顔を上げると、少年は「そっか!」と言いながら
2、3回「うんうん」と頷いた。
 「そうだよね!もしかしたらこれは学園からのミッションかもしれないのに他の人に答えを聞いちゃったらダメだよね!もう少し考えてみる!ありがとうー!」

 そう言って少年は地図を凝視しながら「こっちかなあ……?」と呟きながら森の奥へ進んでいった。

 
「……え?」

 さすがに予想していなかった言葉が返ってきて唖然としてしまった。
 感謝されるようなことは一言も言っていないし、むしろその逆だったはず。



「変なやつ……」
 少年の後ろ姿を見つめていると無意識にそんな言葉が溢れた。

 
 

 


 

 

 
再び僕も地図を凝視しながら森の奥へ進むと「ジャスミン寮」と書かれた看板を発見した。
 早速受付へ向かうと「ようこそマトリカリア学園へ!無事辿り着けたんだね!ミッション達成!」
 ……とまあ上級生がみんな口を揃えて言うものだから、もしかしたら先ほど少年が言っていたミッションとやらもあながち間違いではなかったのかもしれない……。

 それにしてももう少しわかりやすく看板を立てるとか、特にこの地図はどうにかならないのだろうか……?
 
 こうして僕は無事にジャスミン寮に辿り着くことができたのだった。





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