「うあ〜〜、美味しかったね」
『ほんと、学生向けとは思えない味』
かと言ってお腹に溜まり過ぎる訳でもないしいい感じの分量かも。
『でもお茶子ちゃん結構お昼少なめにしてもらってたね?』
「そうなんよ。私、個性使いすぎると気持ち悪くなっちゃうから。」
『それ結構きついね。あぁそっか次の時間実習だったね』
確かお茶子ちゃんの個性って浮かす、とかそういうものだった気がする。浮かす個性とか人命救助とかにうってつけだし現場でも戦いやすいだろうな。真っ当なヒーロー向け個性だし羨ましい。
「あ、次の時間オールマイト来るらしいよ」
『ほんと?間近で見るの初めて』
オールマイトとかテレビで見たことなかったけど、本当にここで先生やってるんだ。あんまり実感わかないけど。
教室に戻るとまだ少し授業が始まるまでに時間があってみんな自由な時間を過ごしていた。席に座る切島が視界に映る。切島と一緒にいるあの子が昨日話にでてきた上鳴くんっていう子かな。切れ長の目で結構イケメンけどチャラそう。
お茶子ちゃんと席についても、なんやかんやと話が止まらず盛り上がる。お茶子ちゃん、天然に見えてサバサバしてるから話してて面白い。
がらっと教室のドアが開く音が聞こえてふと見ると、先ほど私の心をザワつかせた轟くんがこちらに歩いてきてた。
その姿を見た途端になんだか変な風に心臓がドキドキと音を立てる。決して好きな人に胸をときめかせてる訳ではない。まさか今、お茶子ちゃんと話してるんだもん話しかけてくることはないよね。ここで聞かれたらうまく誤魔化せる気がしないし。大丈夫。ちょっとは落ち着け自分よ。
『で、でさーその時うちのお父さんったら』
「うんうん。」
『なんでかスプーン温め始めたの!』
「あはは!なんやそれ!」
『ね?もうツッコむのも忘れちゃった』
「それは立ち尽くすわ〜。…ん?」
お茶子ちゃんの視線が後ろに向けられて思わず息を呑む。やめて振り向けないよ私。
お茶子ちゃんは少し困った顔をして控えげに私の方の後ろの方へ声をかける。
「ど、どうしたん。轟くん」
お茶子ちゃんが声をかけたのはやっぱりというか轟くんでおそるおそる振り返ると席に座らずじっと私を見る轟くんと目があった。
『な、なに?』
「鈴木あおいだよな」
『うんそうだよ。』
「お前、左手の個性、」
『轟くん!!口にミートソースついてるよ!鏡見てこないと取れない感じの!』
「?俺、ミートソースなんか食ってねえ」
『じゃ何だろそれ?早く見てきたほうがいいよ!』
「わかった、ありがとう」
轟くんは私にお礼を言うとトイレに行くためかもう一度教室を出て行った。ごめんね、口になんもついてないけど絶対今、個性についてなにか聞こうとしたよね。あ、危ない。轟くんには女子が会話中とかはあまり関係なく気になることは気になる質らしい。
でもこんなに隠しておいて後になってみんなの前で左手の個性使った時、私どうすればいいんだろう。
ふと頭を過ぎったのは昔のクラスメイトの冷ややかな視線、少しひきつった顔、心なく吐かれた言葉。教師の他の生徒よりも一歩引いて話す雰囲気。
あの時は寧ろ何も感じなくなっていまけど、やっぱり私は少しトラウマになってるのかもしれない、自分が思っている以上に。
「ぷぷ、轟くんミートソースは恥ずかしいわ」
隣で吹き出すお茶子ちゃんを見て少し罪悪感がわいた。ごめん轟くん、必死になりすぎて恥かかせたかも。