お茶子ちゃんとランチ

結局、授業が終わったあと隣の男の子は何を言う訳でもなくフラフラと席を立ってどこかへ行ってしまった。というかお昼だから学食食べに行ったのかな。今日はちょうど寝坊してお父さんと自分の分のお弁当作れなくて、お昼弁当ないし私もせっかく学食があるんだから食べに行ってみようかな。


「あおいちゃん!良かったらお昼食べ行かん?」

逆隣から可愛い声が聞こえてそっちを向くとニコニコしたお茶子ちゃんがいた。

『私も今行きたいって思ってたの』

「それならよかったわ〜」

いそいそと財布を取り出すお茶子ちゃんとても可愛い。確かに切島の言ってた通り話しやすい子かも。











『す、すっごい人』

「さすがプロヒーローが作ってるだけあるわな〜」

学食食堂についてまず人の多さにびびった。これ座れるのかな、なんだかショッピングモールのフードコートに来ているみたいな気分だ。

「あおいちゃん来てくれてよかった〜、一人じゃ行きづらくて」

『そっか、先輩とかもたくさんいるかもね。わ、いい匂いする、お腹空いた』

「ほんとや、カレーの匂い〜」

『カレーの気分じゃなかったけどこうなると話は別かも』

いや、ハンバーグも捨てがたいしなぁ。でもカレーしばらく食べてない気がしてきたし匂いが良すぎてそっちに持ってかれそう。

「ふふ、悩んどるねあおいちゃん」

『こういうの優柔不断なんだよね〜、お茶子ちゃんはもう決めてるの?』

「うん、日替わり定食にすんだ」

新しい選択肢が増えて白いモヤモヤが頭の中でケンカし始めた。まぁ、メニュー見て他にダントツで食べたいものあるかもしれないし。


「む?聞いたことある声だと思ったら鈴木くんと麗日くんではないか」

長い列にたどり着きお茶子ちゃんと並ぶと前に腕の動きがうるさい飯田くんと隣には緑谷くんがいた。ちょ、この列でその腕の動き危ないよ飯田くん

『やだ〜飯田くんじゃん』

「嫌なのか?!」

『あ、あの人のハンバーグ定食おいしそ。私もあれにしよう』

「あれなのか?!」

もう声大きいから周りの人達こっち見るじゃん。隣で緑谷くんは困ったようにニコニコしてる。ちなみに飯田くんは和食定食を頂くらしい。










「へぇ〜、じゃあおいちゃんと飯田くんは昨日から既に仲いいんや〜」

『そうなるね〜入学して最初に友達になったの飯田くんだし』

目の前のお茶子ちゃんは、そうかそうかと頬にご飯を詰め込みながら頷いていてなんだかリスみたい。やっとの思いで空いた席を見つけた私達は少し遅めのお昼ご飯を食べていた。

「私もあおいちゃんに話しかけようと思ったんやけど、なんか話しかけづらくてな。」

良い意味でな、とお茶子ちゃんは付け足した。

『それ昨日、切島にも言われたよ〜』

「そうなん?なんだか大人っぽくてな」

『日頃の疲れとかで老けてんのかな、私』

みんなにそう言われると不安になってくるよ、年相応の顔してないかな私。

「でも話してみると全然やわ!」

『私も昨日からお茶子ちゃん気になってたんだよ。話してみたいな〜って』

「そうなん?嬉しいわぁ」

ふふと笑うお茶子ちゃんは本当に可愛くて周りにお花が見えるよ。癒やされる。

  



「そいや、轟くんにあおいちゃんのこと聞かれたよ」

『とどろ、え』

その名前に思わず顔を上げる。轟くんが、お茶子ちゃんに私のことを?轟くんってあのめっちゃ見てきた子だよね確か。

『な、なんて?』

「なんやっけな。確か“あいつの個性本当に1個だけか?”とか何とか言ってた」

『ゴホッ』

思わず喉に美味なハンバーグを詰まらせてしまった。
それが轟くんの見つめてきた理由、ならわかる気がするし何より勘がするどい。

絶対あれは近くに私に直接聞いてくるよね。どう答えようか、待って極限までバラしたくない気持ちもあるしうーーん。
そもそもあの子が私の個性が2つあるかも、と気づいたのはいつなんだろう。



お茶碗片手に急に唸りだした私にお茶子ちゃんは不思議そうに首を傾げたあとお味噌汁を一口啜った。