2日目




朝だ。
目覚まし時計が鳴る前に目が覚めたのなんて久しぶりだった。
伸びをしてから時計を見ると今は6時前で、昨日貰ったプリントを確認すると朝ごはんの時間は7時半だった。
その前に昨日と同じところを軽く掃除をするということか。

洗顔、歯磨き、簡単なメイクをして着替える。
ジャージの上にダウンコートを羽織り、マフラーもした。
部屋を出ると、まだ室内にも関わらず少し寒くて縮こまってしまう。

お母さん、手袋も欲しかったな...

そんなふうに思いながら昨日の夜と同じ場所へ向かう。
分かってはいたものの、忍足はおらずしんとした空気が辺りを漂っていた。

玄関付近をもうそろそろ終えるという頃、こちらに向かって走る靴音が聞こえた。
特に気にせず掃除用具を持ってコートの方へ行こうとすると「申し訳なか、寝坊してしもうたばい」と息も切れ切れに、癖っ毛の大型青年が頭を下げた。

この人は———千歳千里だ。

四天宝寺中の黄色いジャージを身にまとい、あくびをしながら思い瞼をこすっているのが可愛かった。
でも、どうして千歳が...?
「あの、何かありましたか?」
私が問いかけると千歳は「何って...」と頭を掻いた。
「朝ん掃除は俺と一緒にやることになっとるけん。もしかして苗字さんプリント見とらんと?」
千歳はポケットをゴソゴソと右手で弄ると小さく丸め込まれたプリントを開き、その一部を指さした。

外清掃(朝)千歳
外清掃(夜)忍足侑
配膳 各校ローテーション
洗濯 越前、丸井

この他にもそれぞれ役割が分担されており、私たちの作業をみんなが手伝ってくれるようになっているらしい。

「先生たちが、自分たちんことは少しでも自分でやらんばだめだって言うて、こうなったったい」
そう言って千歳はへらり、と笑った。

そうだったのか。
昨日の夜、忍足がいたのは担当だったから。
目を通すのを忘れていたせいで酷く焦ってしまったのを反省した。

「ここはもう終わったけん、あっち行こうか」
千歳はそう言うと私の手から箒を取りコートの方へ向かった。
「次は俺がやるけん、苗字さんはそこで休んどって」
掃除をする千歳を照らすように、太陽が顔を出し始めた。
「千歳くん、ありがとう」
私は精一杯の声でそう伝えると「お。ちゃんと名前覚えとって、えらかね」とまた笑った。




36.9