おかげさまで。

優良ちゃんのアドバイスをレシピにメモりながら、作業を進めていく。
見事に分離することなく生地を完成させ、クッキーは美味しそうに焼きあがった。


(わ、良い匂い)


クッキーの甘い香りが漂ってきて、思わずテンションが上がる。
僕達ではどうあがいても完成しそうになかったクッキーは、優良ちゃんのお陰でとても美味しそうなものに完成した。
毒盛りするのが勿体ない仕上がりだ。

冷ました方が美味しいよの言葉も右から左に流れて、早速試食する。


「…!うわー!うめー!」

「…!うん、凄く美味しい!」


味も申し分ない。
これをバレンタインのお返しにして、殺せんせーのはまた別で作った方が良い気がする。


「これならビッチ先生も納得するだろ!」

「…イリーナ先生?」

「…うん。実はさ、ビッチ先生に暗殺クッキーを作るように言われてて」


殺せんせーを暗殺するためのクッキー作りを押し付けられたことを告げれば、優良ちゃんは苦笑いした後「せっかく美味しくできたのに普通に食べられないんですね」と寂しそうに笑った。


「やっぱ、勿体ないよな…」

「…うん、僕も思った」


そもそも、殺せんせーなら市販のやつを加工しただけでも喜んで食べてくれるだろうし…。
あれだけ苦労して、美味しく頂けないのは少し寂しい気がする。
そんなことを思っていると、少し乱暴に調理室の引き戸が開いた。


「あら、上手くできてるじゃない」


そう言ってずかずかと入ってきたのはビッチ先生だった。


「まあ、クッキー程度、中学生なら誰でも作れるレベルだし。これくらい当然よね」

「「…」」


ビッチ先生のさり気無い一言がぐさりと心に刺さる。
優良ちゃんはビッチ先生の言葉に苦笑いを浮かべていた。
…料理のセンス、ないのかな。

落ち込む前原君や僕を余所にビッチ先生は完成したクッキーを試食していた。


「…!!アンタ達、意外にやるじゃない」


凄く美味しいと、ビッチ先生が僕達を褒めるので素直に優良ちゃんに手伝ってもらったことを伝えた。


「あら、優良が手伝ってたの?」


「道理で美味しいわけだわ」と続けるビッチ先生に反論する言葉もない。
ビッチ先生はもう一つクッキーを口へと運ぶ。


「流石、優良ね」


そう言って、優良ちゃんの頭を撫でるビッチ先生。
嬉しそうに笑う優良ちゃんは可愛いけど…ビッチ先生、優良ちゃんには甘いよね。
…まあ、優良ちゃんに甘いのはビッチ先生だけじゃないんだけど。


「あのタコにこれは勿体ないわ。もう一度、作り直しなさい」

「「…えぇ!!」」

「なんでだよ!」



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