ホワイトデー当日。

ホワイトデー当日の朝。
優良ちゃんに手伝ってもらいながら作ったクッキーをバレンタインのお返しにと女子達に渡していた。


「わ!凄く美味しい…!」


「これ、手作りだよね?」と聞いてくる茅野に、優良ちゃんに手伝ってもらいながら作ったことを伝えれば「なるほど納得!」と返って来た。

僕以外にもバレンタインのお返しを渡す姿がちらほら見える教室に殺せんせーがやって来た。

そろそろ朝のHRの時間か…。
そう思って席に着こうとしたら、お洒落な紙袋を持って殺せんせーの所へ向かう優良ちゃんが目に入った。


(…あれ、今日ってホワイトデーじゃなかったっけ?)


どうして優良ちゃんが殺せんせーに紙袋を渡しているのだろうか。
そう思って殺せんせーと優良ちゃんに近づいてみた。

声をかけてみると、なんでもその紙袋の中には優良ちゃんのお父さん…つまり理事長からの『娘がいつもお世話になってます』的なプレゼントが入ってるらしい。


(……)


ホワイトデーってそんな行事だったっけ。
僕の心のツッコみにも気づかずに優良ちゃんは殺せんせーに紙袋を渡した。
そんな僕達のやり取りに、クラスの視線が集まる。

一体何が入ってるんだろう。
殺せんせーが紙袋から中身を取り出してみると、紙袋同様にお洒落な小箱が出てきた。
その小箱の中には4つのチョコレートが綺麗に並んでいる。

…凄く、高価そうだ。
でも、あの理事長のことだから何か入ってそう…。
殺せんせーもそう思ったのか「…理事長先生からですか」と少し躊躇いの色を見せた。

…殺せんせーが珍しい。
そう思ってメモを取っていると、殺せんせーが「…では、早速頂きますね」と決意したようにチョコレートを口に含んだ。


「うぅ…!」

「「「「「…!!」」」」」


やっぱり何か入っていたのか!?とクラスの視線が殺せんせーに集まる。


「とても美味しいですね、これ」

「「「「「紛らわしいわ!!」」」」」


幸せそうに食べてる殺せんせーに思わずクラス皆でツッコんだ。
流石の理事長も高価そうなチョコレートに毒を盛るようなことはしないみたいだ。
そんなことを思っていると優良ちゃんが「お父様、凄くお菓子作りが上手なんです」と凄く嬉しそうに言った。
…って、あれ。


「「「まさかの理事長の手作り!?!?」」」

(((それで何も入ってないって…)))

(((((ありえないだろ…!!)))))


なんて、僕達の気持ちも知らずに殺せんせーは「もう一ついただきますね」と言ってチョコレートを口に入れた。


「うぐっ…!」

「「「「「!!!」」」」」

「…にゅやっ」


…なんか、はりねずみみたいになったんだけど、頭が。


「どうやらシアン化カリウムが入っていたようで」


シアン化カリウムって確か青酸カリの正式名称だったよね。
……理事長、殺す気満々だ。


「しかし、効きませんねぇ」


「先生には」とニヤニヤとナメた表情を浮かべる殺せんせーは再びチョコレートに手を伸ばした。


「美味しいですねぇ」


どうやらロシアンルーレット方式のようで、毒が盛られてるのは1個だけだったようだ。
殺せんせーは優良ちゃんに「とても美味しかったとお伝えください」と言って最後の一つを口に入れた。


「ぎゃーー!?!?」

「「「「「!?!?」」」」」


こ、殺せんせーが…!!
悲鳴を上げた途端、口を中心に顔が溶けた。
どろっと溶けた殺せんせーに僕達も吃驚する。


「ど、どうしたの…!?殺せんせー!」


僕が声をかけるけど、何を話してるのかよく分からない。
そんな殺せんせーを見て、何か心辺りがあったのか優良ちゃんが言葉を発した。


「あっ……そう言えば、昨日から私の対先生ナイフが見当たらなくて…」


「お父様が持っていたんですね」なんてのほほんと言う優良ちゃんに思わず乾いた笑いが漏れる。

青酸カリはダミーで、本命は対先生ナイフを細かく刻んで仕込んだチョコレートの方だったんだ…。
【殺せんせーの弱点@カッコつけるとボロが出る】というのを知ってて仕込んだものだとしたらチョコレートを食べる順番も誘導されていたのかもしれない。

僕と前原君が考えていた暗殺方法は、何故か理事長の手で数段レベルアップされて実行されたのだった。
それでも殺すことはできなかったけれど「人の気持ちを弄ぶなんて酷い…」と殺せんせーはしくしくと落ち込んでいた。

そんな殺せんせーの心情も知らずに、今日も爽やかに始業のベルが鳴り響いた。

僕等の教室は今日も暗殺日和だ。



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