それは好都合だ

一方的に切られた電話を見つめ、思わずため息が出る。


「…」


このままあの子達に任せておこうかとも思ったが、優良に何かあったらと思うと心配で仕事が手につかない。
E組が絡んでいることを考慮すれば、近くにあの黄色い超生物がいることは分かっているのだが…、優良は私が守りたい。

学秀の言っていた目的地と優良の現在地を照らし合わせ、優良達が通るであろう経路を推測する。
…大体、この辺りで落ち合えるだろうか。
車へ乗り込み目的の場所へと向かった。

目的の場所である駅へと到着し、もう一度優良の現在地を確認する。
一定の速度で進んでいる所を見ると、予想通り電車でこの駅を通過するようだ。

車を降り、駅構内へと向かう。
流石に優良が何両目の車両に乗っているかを推測するのは難しいか…。
確実に優良と会うため、優良のスマホに入っている人工知能を頼ることにした。

聞けば、優良の乗っている車両情報の他に、途中下車した王女たちと合流するためにこの駅で折り返すことになったことも分かった。


(それは好都合だ)


改札を抜け優良の乗っている車両に1番近い出入り口へ向かいながら、どう優良を説得しようかと考える。
聞き分けの良い子ではあるが、途中で投げ出すことを嫌がる子でもあるから…と、あれこれ思案していたのだが、杞憂に終わった。
私の所に残り、E組の生徒達の背中を大人しく見送る優良。
何かあったのかと問いかけたが、なんでもないとばかりに首を横に振るだけだった。


「…」

「…!」


何かあったことは明白だが、優良が話したがらないのなら仕方がない。
いつまでもここにいるわけにはいかないので、優良を抱えて車を待たせている場所までゆっくり歩くことにした。

大人しくされるがままの優良に視線だけを向けるが、ぼんやりと元気がない。
熱でもあるのだろうかと額を合わせたが、目を丸くして驚くだけだった。

沈黙を貫いていた優良がぽつりぽつりと呟くように話し始めたのは、車に乗り込んでから少し経った頃だ。


「秀くんが離れてしまいそうで、寂しかったんです…」


私の胸板に顔を埋めて「E組に行って、少し距離を置いたのは私なのに、すごいわがまま…」と言葉を続けた。


「…」


…学秀がそう簡単に優良から離れるわけがないだろうと言ってあげるべきか、否か。
思考を巡らせつつ、あやすように背中をぽんぽん撫でていると、暫くして小さな寝息が聞こえてきた。


「…」


すやすやと眠る優良を見て、わざわざ教えてあげる必要もないかと考えるのを止めた。
優良がどう勘違いしていても困るのは学秀であって、私ではない。
寂しそうにしている優良には悪いが、その分私が存分に甘やかそう。

ノルゴ国の大使館へ向かいながら、意識を優良から王女の件の後始末へ移した。



*

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