3階の女子トイレ

「渚さん、優良さん」

「う…ん…?」


律に名前を呼ばれた気がして、目が覚める。
目を開いた瞬間、視界に映ったのは見知らぬ天井。
しかも、とても高い。

ぼんやりしながら起き上がると、黒いローブを纏っていることに気が付く。


(あ、あれ?制服じゃない…?)


隣には優良ちゃんが横になっているのが確認できた。
それからあたりを見回してみたものの、やはり知らない場所だった。


「渚さん、大丈夫ですか?」

「…う、わあ!?」


め、目の前に律が…!!
なんで…!?
いつから画面の外へ出られるようになったの!?

吃驚し過ぎて、思っていたことが全て言葉になっていたみたいで「?何を言ってるんですか、渚さん」と不思議そうな顔をされた。
え…なんで律が不思議そうにしてるんだろう。
不思議がりたいのは僕の方だ。

さっきまで普通に授業を受けていたはずなのに。
確か…そう、社会の授業。
授業を受けていて…あれ?
何があったんだろう…。
居眠りした記憶がないんだけど…。


「……?」


あれこれ思考を巡らせていると、優良ちゃんも目を覚ましたみたいで。
不思議そうに辺りを見渡していたが、浮遊してる律を見て「きゃっ…!?」と短い悲鳴を上げた。
だよね、やっぱり驚くよね。


「今日のお二人は少し様子が変ですね」


そんな僕達の反応を見て、そんなことを言う律に内心困る。
至って普通の反応な気がするんだけど…。
律の言葉にどう返したら良いか分からず、話題を変えてみた。


「そ、それより…ここはどこ?」

「?本当にどうしたんですか、渚さん」


結果、余計に心配されてしまった。
律的には知ってて当たり前の場所らしい。
「3階の女子トイレですよ?」と答える律に別の意味で吃驚する。
え?女子トイレ?
え…なんで、僕が普通に入ってるの?


「そして私の住まいです」

「住まい…!?」


なんでトイレに生息してるの…!?
ツッコむ所が多すぎて、どこからツッコめば良いのか分からない。
優良ちゃんも目を丸くして、固まっている。


「さ、さわれない…」

「そこなの…!?」


律に手を伸ばしてそんなことを言う優良ちゃんに思わずツッコんでしまった。
もっと他にあると思うよ、優良ちゃん!
少しずれた発言をする優良ちゃんに吃驚してると、律からとんでもない言葉が返ってきた。


「仕方がありません…。ゴーストですから…」


「私も優良さんに触れたいです…!」と涙ながらに話す律に開いた口が塞がらない。
ご、ゴーストって…!!
え、それって、ゆ、幽霊のこと…!?
あまりの展開に血の気が引く。

これは夢だと思おうとしたけど、感覚は至って正常だし。
しかも「これは夢でしょうか?」と首を傾げる優良ちゃんに「…あれ?僕のじゃないの?」という不思議な会話までしてしまった。
現実味が増すばかりのこの状況に固まっていると「そろそろ寮に戻った方が良いと思いますよ」と律が声をかけてきた。


「あまり遅くなると監督生の方々が心配します」

「え…?監督生?」


首を傾げる僕達を他所に、律は僕達を女子トイレの外へ導いた。
た、確かに、いつまでも女子トイレにいるわけにはいかないけど…。


「…寮ってどこにあるんでしょう?」



*

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