「阿吽戦法……?」
「何だそれ、乾知ってる?」
「いーや」
菊丸先輩の問いに返答する乾先輩。私も正直よくわからない。
「1日、2日で何が出来る、ハッタリだ」
そうだよね、数日組んだダブルスでそう簡単に勝てるワケないよね。
「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ玉林サービスプレイ!!」
「布川ーっ!泉ーっ!!玉林魂見せてやれー!」
ワアアアアと歓声が起こる。玉林中、盛り上がってますなぁ…。
「いけぇ!桃城、越前!!」
「青学っ!青学っ!」
「出てきたことを後悔させてやるよ!」
盛り上がりは青学も負けてない。サーブを打った対戦相手、その球を打ち返した越前。
「越前ヘボるなよ」
「そっちこそ」
テニスボールをコートの真ん中に打つ玉林中。このまま二人ともぶつかったりしないよ…ね?
そんな二人は「阿ーっ吽ーっ!!」の掛け声で相手コートに球を打ち返していた。
『!?』
「返した!?」
「そんな!この前は…」
私達より対戦相手の方がビックリしている。そんなにあの二人のダブルスは酷かったのね…
「おおお!意外と息合ってんじゃん。桃と越前!」
「あの掛け声は妙だけど」
「阿ーっ吽ーっ!!」
「0ー40」
「息合ってるけど…」
「恥ずかしいね」
「…うん」
0ー40で青学が一歩リードした。うん。分かるよ、その気持ち。でも上手くいってるからいいじゃんか。点入ってなかったらダサいけどさ。
「ダブルス能力開花!オレの力だな」
「決めたのオレ」
桃城先輩と越前が会話しているが、まだ試合は始まったばかりだし、ダブルスの経験がほぼ皆無なもんだから何かしら弱点はありそう。
「真ん中を克服してきたってワケか…。阿吽の呼吸のつもりかよ」
「アセるな、揺さぶればボロが出る、見てろ…ー前衛の後ろに落とす」
怪しくなってきたぞ…大丈夫かなぁ。
「うりゃ」の掛け声で球を打ち返す桃城先輩。
桃城先輩と越前が縦一列に並び、片方のコートががら空きになってしまった。対戦相手は見逃さずにスマッシュを打つ。それを二人同時に動き、ラケットがぶつかり合ってしまった。
「15ー40」
恐らくダブルスじゃなかったら間に合っていたはずだ。
「…やりおった」
「真ん中以外は意志の疎通は0だな」
『覚えてきてたのは真ん中の対処法だけみたいですね…』
「ふっ、ふふ」
いままで黙っていた竜崎先生と手塚部長が呆れている横で不二先輩は笑っている。
『………何笑ってるんですか。不二先輩』
「ふふ、二人が面白くて、ついね」
『はぁ、』
「追い付きそうだったぜ!?がら空きの所を、狙ったのに何ででたらめな脚力なんだ…。こんなやつらとシングルスだったら……」
「布川!!今はシングルスじゃない、ダブルス戦だ。ダブルスにはダブルスの戦い方がある」
「嫌な予感」
「ボクも」
後ろから同じ一年達の会話が聞こえるが無視、無視!
「あ!!ひょろサーブ!打ち損じか!?」
玉林中ってば一体何を考えてるの……?
「決めろ!越前ー!!」
「ワザとだね」と菊丸先輩言えば大石先輩も「うん」と同意している。
越前がサーブを打とうとすれば、玉林中の二人はネットの側に移動した。その様子をみた観客は「ダブルポーチ!!」と、大きな声を出していた。
ダブルポーチ?何だそれ…。テニス初心者の私には意味不明だ。気になるので隣に座る不二先輩に尋ねた。
『……あの、不二先輩。ダブルポーチって何ですか?』
「ダブルポーチはダブルスでボレーをしに二人同時にネットにつくことだよ」
『ありがとうございます』
……ダブルポーチの意味はなんとなくわかったけど、新しく出てきたボレーの意味は何なんだろうか。後に調べれば、ボレーとは相手のボールが地面に着地する前に、ノーバウンドで返球するショットらしい。
「あれだけ二人で前につめられたら打つことないじゃん」
「30ー40!」
玉林中に点が入った。
「また返してきた…」
「青学相手に…」
「玉林!!玉林!!」
「こっちも応援だ!!」
「青学ファイ!!」
「ファイ!」
『頑張れーっ!』
「やつら色んなことやり初めてきたな、ヒョロサーブには意味あったのか」
「ふーん、うまいねあの玉林ペア」
桃城先輩と越前は意外と相性いいのかもしれない。