「紅さんは今日もきれいだなぁ…」

任務明けのイタチを引っ張ってやって来た甘栗甘に居たのは笑い合い甘味に舌鼓しているアスマと紅だった。声はかけず少し離れた席に座り、何と無く観察している。幸いにも2人はこちらに気付いた様子はない。

「いい加減気付いているんじゃないか?」
「いや、ない…と思う。お互いとも相手に夢中っぽいし」
「…人の恋路を邪魔したくはないのだが」
「邪魔じゃないよ…観察」

呆れたような顔をしたイタチは団子を頬張りながら諭すように私に話しかけた。だが無駄だと分かったのかそれ以上は何もなかった。

「ねぇ、イタチも綺麗だと思わない?紅さん」
「…お前、嫌じゃないのか?」
「え?何が」
「………。いや、何でもない。…それより紅さんの事をそう思うのなら、休みの日くらい女らしく化粧でもしてみたらどうだ」
「け、けしょう…?!」

イタチのその言葉に思わず大きな声が出そうになるのを何とか抑えた。そんな私に怪訝な表情を向ける彼越しに紅さんを見る。元々整った顔立ちに上手に施された化粧、まさに美人としか言いようがないだろう。何とも言えない気持ちなってため息をついた。

「無理無理。化粧何て似合わないし、第一らしくないって笑われるよ色んな人に」
「…そうかもな」

笑いつつ湯呑みに口を付けるイタチに思わずむっとなる。自分で言った事だがこうも笑われるといい気はしない。件の2人は今も尚仲睦まじそうに話していた。

「じゃあさ…イ、イタチもさ髭とか伸ばしてみたら?」
「髭?」
「アスマさんみたいに。ちょっとは男らしくなれるかもよ」
「……似合うと思うか?俺に」

そう言われ少し想像しかけるも慌てて頭を振る。…ないな。そう思った私をお見通しと言わんばかりにイタチはだろう?と言いった。

「俺もカズラもそのままが1番だな」

終いにはそんな事をサラリと言いのけたイタチに今度は私がタジタジになる。敵わないなと思い視線をしたに下げるとあることに気付いた。

「あれ…」

私のお皿に乗っていたみたらし団子の姿が完璧に消えている。まさかと思い顔を上げると案の定と言うか、至って当たり前の様にみたらしを頬張るイタチがそこにいた。

「イタチ…!そ、それ!私の…!」
「いつまで経っても手を付けないから、いらないのかと思った」
「そ、そんなぁ…」

項垂れる私を他所に素知らぬ顔で緑茶を啜るイタチ。よく見れば何とそのすました顔に珍し物が付いている。驚きやら何やらで何とも気の抜けた声で話しかけてしまった。

「…イ、イタチ…」
「?どうかしたのか」
「たれ…ついてるよ」

その言葉に少し目を見開いてからゆっくりと視線をずらし口元を何度か拭うも上手いこと外している。じれったくて身を乗り出してそれを拭うとちょっぴり固まったイタチにぎこちなくお礼を言われた。

「……」
「!!…カズラ…お、お前」
「へっへっへ…してやったり」

拭い取ったまま指に付いているたれを冗談半分でぺろりと舐めると面白いくらいにイタチの顔が赤くなる。団子の仕返しだと言えばわざとらしく大きなため息をつかれた。そんな彼をまぁまぁとなだめていると不意に肩を叩かれ振り返る。

「!!」
「…見せ付けてくれるじゃねぇのお二人さん」
「ア、…アスマさん…」

どうやらイタチの言う通り気付いていたらしいアスマと紅に私はそっと目をそらした。
そんな私の耳に呆れるようなイタチの声が聞こえて来たような気がする。

「諦めろ、カズラ」

どうやら今回は助け舟は出してくれないらしい。


 


HOME
ALICE+