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「カズラ……?」

任務帰りの私の噂をどこで聞いて来たのやら。綱手様の計らいもあり報告はとりあえず明日で、という事になったのでこのまま街に行くか…と考えていたのもつかの間目の前には愕然というか、呆然というか何とも珍しい目を見開いて驚くイタチがいた。

「報告明日でいいって」
「カズラ」
「イタチ今日はこれから任務だっけ?」
「…いや、今終わらせて来たところだが…それより…」
「?」

少し言いにくそうな戸惑いを見せた後、イタチは手を伸ばした。随分と短くざんばらになった私の髪に。

「どうしたんだ……」
「ちょっとね。どっちみち、そろそろ切ろうとは思ってた」

先の任務で思いもよらぬハプニングが起こりそれを助ける形で私の長かった髪は今の長さになってしまった。元々何か理由があって伸ばしていた訳ではない。イタチが伸ばしているからとか、たまに私の頭を撫でながらくるりと指先でそれを弄ぶイタチの仕草が結構気に入っていたからとかそんな曖昧な感じで気付いたら肩甲骨を優に越していた。

「そうか」
「んー、で、綱手様もそう言ってくれたしこれから……」
「この時間じゃまだ開いてないぞ」
「……」

何てったって今は早朝だ。お店が開くだろう時間まではもう2.3時間はありそうで、そう言えばそうだなと言われてから気付いた。中々に神経の使う任務だったし、髪もこの有様。自覚が無いだけで結構疲れてるのかもしれない。

「俺が…整える。から、うちに来い」
「え、あ、ちょ!!」

そんなことをぼんやり考えていたからか呆気なく腕を取られズンズンと前を歩くイタチ。いつになく積極的…と言うより有無を言わせない感じに首をかしげながら私は引かれるま後を追った。何にしろこのままは嫌なのが本音だ。

最低限の音だけで開かれた扉の向こうからふわりとお味噌汁だろうか、いい香りがした。ミコトさんだなと思う私に、サスケは多分まだ寝てるからと一言言って縁側に私を1人残して何かしら道具を取りに部屋へ。そう言えば勝手知ったる仲とは言え朝に挨拶もなく居ていいのだろうか…とちょっとだけ思ったがなすがまま。私は何をさせても器用にこなすうちはイタチくんに、これまた見事に髪を整えてもらった。

「……あなた本当に器用」
「母さんが教えてくれたからな」

何か理想はあるかと聞かれたのでイタチの好みにと返した結果、鏡に映る私は綺麗なショートヘアへと変貌をしていた。さっきまでのざんばら髪が嘘のよう。

「イタチって髪は短い方が好みなの?」
「…………どちらかと言えば、長い方が…」

そうだと思った。今日1番に見た残念と言う言葉が顔に出たあの忍らしくない一瞬は記憶に新しく確信はあった。それならもう少し気を回せばよかったなぁと今更ながら思っていたら不意に首筋からうなじにかけて手が滑る。びっくりしたが振り返る事は出来なかった。

「綺麗に伸びるように切った。……ここがいつも見えているのは、落ち着かないから…」
「っ、…」
「また伸ばしてくれるか…?」

ちゅっとうなじに触れる柔らかい感触が。それが口付けだと気付く頃には私は真っ赤に染め上げられているに違いない。あくまで爽やかに笑うイタチがどうにもにくたらしかった。

  


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