「……イタチ」
「…いや、分かってはいるんだ」
「じゃあさ朝早いしそろそろ…」
「お前にもあるだろう、頭で理解は出来るがそれでは納得出来ない時が」
「いや、まぁ…。でもそれとこれは話が違うでしょ」

ことの始まりは少し前まで遡る。本当に久々に来てしまった所謂色任務、5代目である綱手さまは至極申し訳なさそうに私にそれを言い渡した。何かと忙しいこの時期、丁度空いていたくノ一が私だったのだ。特に難易度が高い訳でもなく少しだけ時間がかかりそうな位なので引き受けたのはいいが、つい口が滑ってイタチに話してしまった結果が冒頭の会話である。
ぽろっと言ってしまった後しくじったと思うよりも早くイタチから向けられた痛い視線に私はたらりと冷や汗が流れた。

「……」
「何で駄々こねてんの…らしくないよ、ほら」
「カズラ…」
「任務は任務。でしょ?」

そう言うとぐっと黙り込む。イタチ言いたいことは無論、分かっている、がこんな風になるとは微塵も思っていなかったので不謹慎ではあるがその態度が少し嬉しかった。とりあえず私を包み込む様にべったりと抱き付いている彼にやんわりと離れるように促してから再び話を切り出す。

「ちょこっと色仕掛けして情報取ってくるだけなのに心配し過ぎ」
「そのちょこっと、が問題なんだ…」
「……、嫉妬してくれるのは嬉しいけどイタチしつこい」
「別に…妬いている訳では」
「こんな顔してるのに?」

不満ですと言わんばかりの雰囲気を醸し出し眉間に寄っている皺をいつも彼がする様にとんと突くと、気付いていなかったのか少しだけ目が開かれる。そんな様子につい笑ってしまうとほんのり赤いイタチがゴホンと咳払いをした。

「こういう時のイタチはびっくりするくらい素直だね」
「…あのな、」
「大丈夫、全部演技だから。本当にそういう事したいなぁって思うのはイタチだけだから」
「!……」
「…なんならどういう事するかイタチに前もってしてみよっか?」

ぐぐっと距離を縮め首に腕を回してそれっぽく笑うと一気にイタチの顔が赤く染まった。普段妙に大人っぽいくせに、時々垣間見える初心な所が心を擽って口には出さないが密かに可愛いと思っていたりする。自身の赤い顔に気付いているのかいないのか、イタチは顔をそらしてわざとらしくため息をついた。

「しなくていいから、離れてくれ」
「ちぇ、残念」
「…とりあえず今回は目をつむる」
「おぉ!!」
「カズラに限って心配もいらないとは思うが、気を付けるんだぞ」

自分の身をここまで案じてくれる彼にやっぱり好きだなぁと気持ちを再確認。お礼に、何て思いなが頬に一つキスを落とせばそこには滅多に見れないあからさまに動揺したイタチがいた。


 


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