【2】近づきたい



嫌だったけど、もうこの手を使うしかない。


"双葉はなんでバレーやんないの?"


いろんな人にそう言われる。
バレーは好きだけど、見る専門だ。
だって、バレーの才能は皆無だし、運動神経もいいわけじゃない。
けど、身内にバレーの関係者がいると必ずと言っていいほどあの一言を言われる。

そして、その身内が一番バレーにうるさいのだが、私は今その身内を利用しようとしている。


「こんにちは!お邪魔します!」
「双葉…もしかして…」


はっはっはっ!研磨くんさすが、先日の私の言葉を思い出したようだ。

"お近づきになろうかと‼"

バレー部のかけ声が飛び交う体育館に足を一歩踏み入れた。
数名の同級生が気づいて手を振ってくれた。
あ、クロくんも気づいてくれた。わあ!こっち来る!


「君、研磨と同級生の…」
「朝日奈 双葉です!」
「あー…何かご用かな?」
「あの、祖父に用があって来ました。」
「あぁ、祖父…祖父?」
「はい!猫又監督いますか?」
「おぉ、なんだ双葉、わしに用か?」
「祖父!!?」


そう、何を隠そう、音駒高校男子バレー部監督・猫又 育史は私の祖父である。
母方の祖父なので、名字は違うので知らない人が多い。私も公にはしてこなかったし。
クロくんに近づくために、今回は利用させていただきます!


「朝、体調悪そうだったし…心配で…だから、今日は一緒に帰ろう?」
「珍しいじゃないか。何も買わんぞ。」
「何か買って欲しくて言ってるわけじゃないよ!」
「まぁ、いいだろう。練習が終わるまで待ってなさい。」
「わかった!」
「双葉、そんなに元気ならちょっと手伝いなさい。」


お祖父ちゃんにそう言われてバレー部を手伝うことになった。
クロくんに改めてご挨拶して、何を手伝ったらいいか指示を仰いだ。


「ウチ、マネージャーがいないから、一年にやること聞いてくれる?主にドリンク作ったりになるとは思うんだけど。」
「はい!」
「元気がいいねぇ。よろしくね、双葉ちゃん。」
「っ‼」


聞きましたか⁉
名前を呼んでくれました‼録音したかった‼
ぁ、いやでも、あれだとなんだか距離感ある呼び方だよね…

とまぁ、なんだかんだ色々とマネージャー的な仕事を主に手伝っていた。
その間にチラチラと練習風景も見れるわけで、クロくんのバレーをやっている姿はすごくすごくかっこよかった。


「見つめすぎでしょ。」
「研磨!ナイストス!」
「まさかとは思ったけど、監督使ってくるなんて…双葉らしくないね。」
「いや、まぁ…」
「近づきたいならさ」
「ん?」
「マネージャー…やれば?」



(その手があったか!!!)
(え…考えもしなかったの?)
(お祖父ちゃーんっ!!!)
(はぁ…)


―藁をもすがるなんとやら。

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