【3】伝えたい



待て待て。どうしてこうなった?


「私、クロ先輩が好きで音駒まで追いかけてきたんです。」
「…は?」


双葉ちゃんが数週間前からマネージャーをしてくれる事になった。
練習が長引き、帰るのが遅くなったから家の方向も同じだという事で研磨と近くまで一緒に帰る事になった。
そして、突然の告白。いや、暴露と言うべきか。


「え、いや、待って。…急すぎて。…は?」
「クロ、会話になってない。」
「待て待て待て!なんでお前はそんな冷静なわけ⁉」
「だって、知ってたし。」
「てか、追いかけてきたって、前から俺のこと知ってたの?」
「やっぱり覚えてないですよね…」


少し悲しげに笑う双葉ちゃんには申し訳ないが身に覚えがない。
やっぱりどこかで会っていたんだろうが、本当に記憶がない。


「小さい頃、お祖父ちゃんに連れられて行った体育館に研磨とクロくんがいたんです。」
「え?」
「私はバレーが出来なくて、隅の方でつまんなそうにしてたら」
「つまんなそうにしてた自覚はあったんだ…」
「うっさいなぁ!」
「……」
「あの時、クロくんが一緒にやろうって誘って、初めてバレーが楽しいって思えたんです!」


"おチビさん、バレーやんないの?"
"おチビさん…?私?"
"そう!一緒にやろうぜ!"


「人見知りのクロが自分から行くからビックリしたよ。」
「…おチビさん?」
「はい!おチビさんです!」


案外、あっさりと思い出せるもので。
研磨と初めて近所のバレーチームの見学に行った時にいた女の子だ。
あんなに広い体育館の隅で三角座りをしてぼーっとコートを眺めている姿を思い出した。
あの時は人見知りのすごかった俺だったが、なぜかおチビさんには声をかけられた。
おチビさんと会えたのはあの一回きりだったが、俺はあの日のことを忘れない。


「思い出してくれて、嬉しいです!」
「あー…なんか悪りぃな。会った時にすぐ気づいてやれなくて…。」
「いえいえ!研磨が覚えてる方がすごいって言ってましたし、大丈夫です!」
「そっか。」
「私、あの時クロくんが好きになって、それで、初恋だし!ここまで来れたので、今度はクロくんにも好きになってもらえるように頑張りますね!」


じゃ、私家こっちなんで!と元気に去って行く彼女に呆気に取られていた。
研磨がついた盛大なため息で現実に引き戻された。


「えぇ!?」
「クロうるさい…」



(え、俺はどうしたらいいわけ?)
(知らないよ。)

―モテ期は突然に。

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