「おお……さすが、すごい別荘だ」
きらびやかなシャンデリアが照らす部屋の内装が、光源に負けじと輝いている。
妖怪博士と別れてからすぐにワカメくんの別荘にやってきた。別荘のすぐ隣には五台ほど車を止めれる駐車場を見た時は、彼の頭から生えてるワカメを引きちぎりたくなった。
車で来れるならそれでこればよかったよね!? それかちゃんと舗装された道を来れればこんなに苦労はしなかったじゃん!!!!
と。
自前の露天風呂を自信気に自慢するワカメくんとそれに目を輝かせる巻さんたちを帰りたい気持ち半分、ワカメくんに対するちょっとした憎悪の気持ち半分で睨む。
そんな痛い視線に気づいた清十字くんだったが、気づくだけで理解はできていないらしい。さっと私と肩を組んで背中を叩いた。
「君も温泉を待ちかねていたのだろう! 存分に堪能したまえ」
「ハイハイ。アリガトウ、清十字くん」
まあ文句を垂れてても仕方ない。こんな夜じゃあ帰ることもできないし、ここは文句は飲み込んで旅行を満喫しよう。
「ふぅ…普通に温泉だ…」
かぽーん、下手したら普通の旅館より広い温泉をほぼ貸切状態で満喫する。髪をまとめ首までお湯に浸かると山を登った疲れもすぐに洗い流される。
カナちゃんは眉を顰めて落ち着かない様子だ。
「ねえ…及川さんみた……?」
「ううん。見てない」
「どこ行ったんだろう……?」
「あー……」
つららは溶けちゃうからお風呂入らないもんね。
とはいえ、そんなことカナちゃんに丸々伝えるわけにはいかない。
「多分奴良くんと一緒じゃないかな」
「え…!? どうしてリクオくんの名前が出てくるの!?」
大きな飛沫をたてて立ち上がったからカナちゃんのあられのない部分が見えてしまい思わず目を逸らす。
「つららはあんまり温泉好きじゃないって言ってたしそれに…」
ちら、と囲いの外に目をやる。
「奴良くんのことすっごい好きみたいだし」
「私もう上がるね!」
「え、待っ……」
「こら、薫っちまで行くなよ〜」
私の言葉を聞くなり、カナちゃんは温泉から出てしまった。その後を追いかけようとした私を巻さんが引き留める。
「せっかく水入らずの女子トークしよーって思ってたのに、みんなノリ悪いの。もっとゆっくりすればいいのに」
「っわ、」
巻さんから逃れられず再び元の場所に座る。
期待のこもった目を向けられ、そうするしかなかった。
「一度薫っちとも話したかったんだよね〜。ほら、アンタってカナにべったりだし」
「そんな気はないけど……そうなの?」
こくりと巻さん、鳥居さん、それに花開院さんも頷く。「べったり」そんなふうに思われていたとは…いや、それでなにか悪いことがあるわけではないのだけれど。
「私はみんなとも仲良く……ッ……!?」
突然感じた敵意に立ち上がる。ザバァと飛沫があがる。
「ん? 薫っちどしたの?」
「な、なんでもない…やっぱり、のぼせちゃったから私もあがるね」
カナちゃんはどこまで行っただろうか。この瘴気に溢れた山では一人の影を追うのは難しい。体についた水気をタオルで拭き取りながら振り返る。
「あ、花開院さん」
キョトンとした顔の花開院さん。彼女がここにお札を持ち込んでいるのを脱衣所で見た。ポヤポヤした顔の割に、陰陽師としての自覚は十分あるらしい。頼もしい人だ。
「もしなにかあったら、よろしく!」
「あ、うん……!」
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