02

「帝国殿」
ふと顔を上げると菊がいた
「どうかしたか?」
菊はゆるゆると首を横に降り
「いいえ、心此処にあらずと言った様子だったので」すみませんと、眉を下げた
本当は私よりずっと年上なのに普段の言動のせいで私の方が立場が上になってしまった
その事にいつも罪悪感でいっぱいになる
名前の呼び方もそうだ
本来『日本』は菊の名前なのに私のせいで『菊』と呼ばせてしまっている
「帝国殿…いえ、** 」
久しぶりに** と呼ばれた
日本が菊になった時に私にもと、付けて下さった名前だ
「はい、どうなされましたか?」
この時、私達は『菊と** 』つまりただの兄妹になる
「貴方はいつまで男として生きるですか?」
「…」
「第二次世界対戦も終わり、日本は負けました。
貴方が大日本帝国である必要も無くなりました。
そろそろ貴方も** に…女性に戻りませんか?」
少し意外だった
大日本帝国を止めろとは言われると思っていたが女に戻ったら、なんて…思ってもみなかった
しかし
「兄さん…すいません」
それだけは出来ません
そう言って力無く笑うしか出来なかった