03

「…理由を聞いても良いですか?」
「理由は二つあります
まず一つは周りの方の為です
今まで女に騙されてたなんて、面目が立ちませんし…
それに動揺されますから」
「前者はともかく…動揺しますかね?」
「…もしイタリアが、女性だったら兄さんは驚きませんか?」
「…あまり思わないかもしれません
ほら、彼ってどこかふわふわしてますし」
「確かに…ではドイツでしたら?」
「自分の目に自信が持てなくなります」
「そう言う事です」
「**はドイツさんとは違いますよ
芯がしっかりしていて、愛らしいですから」
「…お世辞として受け取っておきますね」
「それで、もう一つは?」
「これは連合国の方との約束で…」
「?何を約束したんですか」
「その…『私はどう扱っても良いが』…」
まさか、と兄の目が大きく開かれた
「『菊には手を出すな』と」
日本が植民地になる事をどうしても避けたかった
そこで連合国からの最大の譲歩と言う事で、私の身と引き換えに間接支配という形になった
「貴方と言う人はっ!」
「すいません」
「自分の事を大事にしろとあれほど言ったのに!」
「だって!兄さんが心配で…
先に言っておかないと何をされるか不安だったので…」
「私の事を思う前に自分の事を考えて下さい
私だって日本男子です、自分の身を守る事位出来ますよ」
「すいません…
でも後悔はしていません」
キリッと開き直って言うと、呆れきってため息を漏らしながら
「まったく…それで、これからどうなるんですか?」
「多分働かされるのではないかと…」
「誰の家で、ですか」
「まだ決まって無いようで…」
「…」
「明日連合国の方が来るのでその時までには…」
「明日、ですか」
「はい」
「…折角かわいい妹が出来たのに…世は無情ですね」
「兄さん…」
「本当に男装は続けるんですね?」
「はい、私も一応日本男子ですから」
「…納得はしませんが分かりました。
後…宜しければ、帝国殿の時でも兄さんと呼んでくれませんか?」
「はい!兄さんが良ければですけど…」
「嫌がる筈が無いでしょう!」
「でしたら、私の呼び方も変えて頂けませんか?
兄に対して帝国殿なんて不自然ですし」
「そうですね…では** と呼ばせて頂きますね」
「** …ですか
私の性別バレませんかね」
「日本だからと言っておけばいいんですよ
相手はあの人達ですし大丈夫でしょう」
だといいのですが…と、呟く私を見て兄さんがクスクス笑いだした
「すいません、なんだかやっと兄妹になれた気がして」
「そう言えば…今までも兄妹でしたのにね」
つられて私もクスクス笑う

その日は始めて兄さんと一緒に寝た
どこか暖かくて直ぐに睡魔に襲われた
「…** 、いつでも兄は貴方の味方だと覚えておいて下さい」
そんな兄さんの呟きを聞きながら私は眠りに落ちた