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2016/09/16
私を呪うのは貴方が吐き捨てる自由の言葉 - 鋸鮫


月明かりが、眼前の顔を照らす。
彫りが普段よりも強調されて見える。

美しい顔。
少なくとも、私にとっては。

顔に指を這わせる。
男がだらりと肘枕にした腕を動かし、私の髪の毛を雑に撫ぜる。
少しでも身じろぐと男が起きてしまうから、私はいつも身を硬くして目を瞑る。

「俺なんかにかまってるヒマがあったら、さっさと嫁に貰ってくれる男を見つけろよ」

眠たい声が降ってくる。

「さあ。そんな人、いるかしら」

重だるく痛む裸体を横たえて、私は彼をそっと見上げる。
暗く未来のない瞳。

「いるさ。俺が保証する」

どうしようもない優しさを感じるのは欲目のせいだけなのだろうか。
彼の身体からは、深海に沈むときのような静けさと、私だけだと思わせる心を許したような無防備さが、確かにあると思うのに。

「お前は幸せになれよ」

そう言うと彼は抱き締める。
私の幸せくらい、自分で決められる。

そう言い返せないのはーー

「がんばる」

祈るように抱き締めた彼の肩甲骨が、私を閉じ込めるために開く。
ああ、このまま地獄の底にでも落ちていけたら良いのに。

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