ぷは、と海面に顔を出す。
強い海風に吹かれる。肺呼吸に戻って、こいつの世界はこちらなのだと実感する。

「死んだか?」

ぐったり身体をあずける千代里を叩くと、ごほごほとむせながら、生きてます、と答えが返ってきた。
痛めつけた後に、すがりつくように太い首へ腕を絡みついてくるのが、お気に入りだったりする。
つい、いつも度が過ぎてしまうのだが。

「紛らわしいな、心配…」

した。と言いかけて止める。
この俺が?下等生物を?

「も、泳ぎたいって、言わない…」
「別に、止めやしねえよ。好きなだけ泳げばいい」

いつ殺人を犯すかわからない張本人にぴったりと抱きつく怯える少女の背中を叩く。

こいつには俺だけしかいない。
どこにもいけない。帰れない。

ゆらゆらと腹の奥でドロリとした欲望が揺れる。

「帰るぞ」

遠くで船が見えた。
きっと、いつものしょうもない弱小海軍サマのお出ましだ。

そういえば、そろそろアイツも帰ってくるころだろうかーー?