日差しの強い昼下がり。
見慣れない1隻の船がパークに招き入れられた。

主人は途端にゴキゲンになって、外へ急ぎ出ていく。例の人間、女幹部の帰還だ。

カツン!カツン!
パーク中に反響するヒールの音は、我ここにありと強く高らかに主張する。

「久しぶりね、アー口ン」

不敵な笑み。
魚人たちの前でも堂々と、臆さぬ姿は戦士のようでもあり。

「また荒稼ぎしたようだな、ナミ」
「ええ、みーんな簡単に騙されてくれて、ありがたいわ」

ふっと、ナミの顔が歪む。
アー口ンのシャツをワンピースのように着せられている、千代里に視線が向く。

「ねえ、その子……」
「そうだった!お前は知らないんだったな。改めて紹介する。新しい、俺の」

言いかけて、彼は何かを逡巡する。

「オモチャなんだが、最近は事務もやらせてる」
「……そう。早いところ、アンタの奴隷ってわけね」

苦虫を噛み潰したような、という表情で、千代里に笑いかける。
方や幹部。千代里は奴隷。

「じゃ、私は疲れているから、シャワーを浴びて、一旦休むわ」

カツカツと屋内へ歩いていく。
真剣味を帯びた詰問が飛ぶ。

「海図は?」
「書き終わってる。量が多すぎてとてもじゃないけど運び出すのまでは勘弁して。船の中にまとめてあるから」

彼女は振り返ることもなく、足を止めることもなく。
機嫌を損ねるんじゃないかとハラハラして聞いてたが、仲間が戻った宴の準備を!と上がった声に安堵した。

私と同じ年頃の女の人。
なのに、彼女は自立している。






宴が盛り上がりを見せ、粗方、今度の航海や裏切りの仔細を話し終え、メンバーの興味が酒に移ったところで、ナミはそっと部屋へと立ち上がる。

そういえば。
あの男が早々に姿を消している。

普段ならウザ絡みをしてくるのに、珍しいこともある。

少しだけ、胸騒ぎ。
不安に気がつかないようフタをして、何でもないように歩く。

ヤツのベッドルームから、少女の悲鳴が聞こえる。


「いやあああ!!」


ゾッと、両腕を抱き締める。
時折、ああして慰み者を捕まえるこは知っているが、それが自分に及ばないことに安心する。
助ける?そんな余裕はない。

ただ自由になる術を知らず、殺されてしまうことだけはないようにと、今晩死なないようにと祈る。


「そう怖がンなよ、ちょっと趣向を変えるだけだろ?」
「お願い…そんなもの…」

千代里は男が手にする、ボコボコと突起が飛び出した、毒々しいカタチの男性器を模した道具を見て、さらに自分の中の何かが壊されるのを感じていた。
そして壊れるたび、この男でしか存在を保てなくなっていくのだ。

ロープを取り出して、男は下品に口角を上げて、千代里を抱き寄せる。

「どうやらアイツの盗んだ船の船長はヘンタイだったみたいでな、もっとイヤらしい道具も、…拷問器具もたくさんあったぜ?なあ……たまには悪くないだろ?」

シュルシュルと縄が千代里の身体にかけられる。菱形に組み上げられ、胸や腰やお尻がキュッと縛り付けられるたびに、女性が強調されるのを感じてしまう。

「お前が嫌がるなら、全部は試すつもりはない」

ずるずると器具を入れられて、ぎゅ!と股に縄が這わされる。

「わかった、から。お願い、拷問だけは…それだけにして……!」


拘束された身体が火照る。
と言いつつも、感じてしまうのが悲しい。魂に忍び込まれて掴み取られるような話し方に、目眩がする。

後手も縛られ、あられもない姿を見せつけるように拘束されたことに息苦しくなる。

「も、やだ…恥ずかしい…」

赤いロープが肌に映える。
見られていることを強く意識するたびに、抵抗できない疼きを覚える。

「来い」

らしからぬ甘い声音に、身体が反応する。
男の方へ向き直る。中の違和感に身体の熱があがり続ける。
ぷるん、と胸をなぞられて、ため息がこぼれた。

「綺麗だ」

少し動くたびに、もどかしい刺激がたまらなくなっていく。
痛くないのにキツく縛られているのには、愛、を、感じる。

「…俺がヤりたくなってきた」

彼は股縄を解くと、ヌルヌルと道具を内壁に擦り付けながら、ゆっくりと抜き出す。
まったく抵抗できない恐怖と、身を委ねきっても良いという信頼に、心臓が胸から出てしまうのではないかというほど、速く強く鼓動を刻む。
身体が熱い。目眩がする。

彼のそそりたつ怒張を入り口へあてるように、胡座をかく腿をまたぐ。

情欲。自分を求める視線が、身体に浴びせられている。
この人の目の中で、私が漂う。


「は、ぁ…」


ただの挿入だけなのに、飛びそうになるくらい気持ちがいい。


「そんな、顔を、されちゃあな」


うっとりとした顔と裏腹に、下は引きちぎるくらいに絡みついてくる。


「だっ、て」


ずんずんと突かれるたびに、動物のような声がもれる。もはや悲鳴だ。
あー、ともらす声と感じきった顔に、心が暗い欲望で満たされる。

「何、だよ」
「さっきの、なんか、より」

声にならない声で、あなたの方が何倍も良いんだもん、と泣く。
アー口ンが、体勢を崩しかけた千代里を倒れないように抱き締める。

ーーどうしようもなく甘やかで、切ない。

千代里は顔を上げて、無我夢中になる男の頬に触れる。
心臓をたえず羽毛でくすぐられているような。動悸が止まらない。

もっと、と呟くと、腰の動きが速くなる。


「何度でも果てろ」


チカチカと白い星が脳天で輝く。
どろどろと溢れ落ちる愛液と精液が、彼を汚していく。

彼は、あ、と苦しげに飲み込んだ言葉と同時に、手を離す。
熱い液がどくどくとお腹に注がれていく。


「避妊薬のんどけよ。念の為」


ふー、と後ろに息を吐きながら身体を逸らして、彼は吐きすてる。


「飲んでる」
「俺との子どもは欲しくねえってか」

変なところにムキになる主に苦笑する。


「欲しいって言ったら?」


ずる、と男を抜き取る。


「あーー、そりゃお前…」


急に押し黙る。
それは、と言い淀む。

「はやく自由にして」

背中を向けて、手を突き出す。
面倒くさそうに、彼は後ろで組んだ手を自由にする。

「……どうしたの?」

しばらく彼女を見つめていたかと思うと、思いついたように秘部をいきなり荒っぽく拭き、股縄を元に戻す。


「あのッ」
「淫乱な千代里にご褒美だ。あと1日こうしてろ」


縄を持ち上げられ、ちり、と敏感になった秘部に刺激が走る。


「お前を、頭から喰いてえ気分だよ」


また、熱度を帯びる視線。
ふたりだけの空間で、男の飢えを感じるたびに、心臓を射すくめられる気がする。

仕方なく服を上から着ると、肌に擦れてまた変な気分にさせられる。
苦しげに歪んだ顔を見て、男は舌舐めずりをする。

「…俺は寝る。足りねェならその道具を使え」

屈辱。
ぜんぶ、彼のせいなのに。

黙って寝転がる背中に頭を寄せる。
ぽんぽん、と頭を撫ぜられる。

この流れも、事後のお約束になってきた。


夜は不安になる。
求められているときだけ、生きていると実感する。生きていていいんだと許される気がする。