気絶した一件以来、アー口ンが明らかによそよそしくなった。
壊れ物を触れるかのように。





「痛っ」
「っと、大丈夫か」

キスの最中で舌を傷つけて、反射的に言ってしまった。
しまった、禁句。組み敷かれながら千代里は男を見上げる。

「ぜんぜ、ん、大丈夫、だから」

ゆるい動きに変わった腰に手を添えて、弱くなった力に眉をひそめる。
たんたんたんたん。肌とぶつかり合う音と、卑しい水音が、混じり合ってリズムを刻む。

「ん、…んん、ん…」

優しいのも、良いけど。
やっぱ、なんか、物足りない。
ここ数日、イってない。

「っん!」

終わっちゃった。
びくん、と身体を震わせて、彼を見上げる。しかも、最中に顔も合わせてくれない。やることはやるのに。

「最近、おかしい」
「どこもおかしくねえよ」

ぐしぐしと頭をなぜる。
ずる、と抜かれて、今日も2度目はなしかー、と少しガッカリする。

「やめちゃうの?」

まだ火照る身体を奮い起こして、視線をそらす男の顔を追いかける。
目があうと、困惑したように、顔をこわばらせる。

「若くないって、前にも言ったろうが。それより、口、大丈夫か」
「平気」
「お前は、…我慢強いから、信用なんねえよ」

べろん。舌を掴み出される。
大きく斜めに、鋭い歯で傷ついた血がにじむ。

「痛かったろ」
「…ン」

指が傷を触る。
ピリッと痛むのさえ、ここのところの欲求不満だからか、気持ちよくてゾクゾクする。
舌を掴む指の力が強くなる。

痛みに身体が悶えて、涙目で男を見上げると、その目に情念の炎が灯ったのを感じ取る。

「ああ、クソッ」

指が離れる。
すまねえ、と声を絞り出すように男の声がするのと同時に、千代里の柔肌に歯が立てられる。つぷ、と肌に歯が食い込む音がする。

肩を甘噛みされているだけなのに、動いたら千切れてしまいそう。

「…大、丈夫、だから」

自由な方の腕で、背びれを撫ぜる。
ゆっくりと、歯が外れる。

「どこもかしこも柔らけえな。こんなに脆くて。だから下等なんだよ」

血がにじむ傷を舐めながら、彼の手が首に伸びる。
アザになってしまった首の、傷跡を引っかいてくる。

ガリ、ガリ、ガリ。

「いっ…」

動脈の近くを、薄く切られる。
そのままその手が、首を覆う。

意識が消えないほどの力で、持ち上げられる。

またチカラを取り戻した彼の肉棒が入り口を舐める。

「く、るし、」
「首を絞められて喜んでんのか。ヒクつきやがって」

膝をついた男の肩に足をかけられ、片手で秘部を暴かれる。
あの暗い瞳で睨め回される。視線を感じる。押さえても、押さえても、彼が欲しくてぱくぱくと動いてしまう。

「どうして欲しい」

きゅうん、と膣が閉まる。
男の目が細められる。

「お前のココは、何が欲しいんだ?言えよ」

首の力が弱まる。
思い切り息を吸いながら、男のものを指さす。

「それ、が、欲しいです」
「で?」

ギュッと首が閉まる。

「…ここ、ぐちゃぐちゃに、して、くださっ」
「ああ、そっか。お前、隠語知らねえのか」

ズン!と突き上げて、久々に全力で抽送を繰り返す。
首を掴んだままベッドに叩きつける。バウンドする女の身体。

「けど、な、今、刺さってるものくらい、わかるだろうが!」
「…っあ、あ、!!」

ガクガクと身体が揺さぶられる。
人間の女にしては長身な身体つき。
小柄だったら、こうは出来ない。
喉を締める力を少し強くする。

欲しい欲しいと吸い付く女の身体。
ただでさえサイズは小さいのに、全てを持っていかれそうなくらい……

苦しくて歪んだ顔。
もっともっと痛めつけて壊してバラバラにしたくなる。

「何度、勝手にイクんだよ」

反り上がって痙攣する尻を叩く。
また悲鳴が上がる。むせ返る。

「や、ぁ、ああ!!」

ごりごりと抉り続ける。そのたびに、千代里の中に快楽が溜まっていく。

内側のヒダのひとつひとつがこすり上げられる度に歓喜に打ち震える。
遠慮なく求められている感じがして、1度目よりクラクラするほど快感が巡る。
殺意に近い欲望に包まれると、男の心のすぐ近くまで寄り添えたと、自己満足だがそう思える。

ぜんぶぜんぶ受け止めたいと思う。
だから、もっと痛めつけて。

腰が文字どおり砕けそうなくらい、痛い。
力があまりにも強すぎて意識が飛びそうになる。

しかし、彼が気持ちよさそうにあえぐたび、お腹と心臓のまんなかくらいがキュンとする。

小さく、息を殺す声がして、ひときわ熱い液体がまた身体の最奥に注がれる。

手が外れて、ずるりと楔が抜かれる。
血が、滲んでいる。

「…いつか、お前、死ぬぜ?」

一切力が入らない。
答えも苦しくて返せない。

良いんだよって、伝えたいのに。