同胞には部屋を与えなきゃな。
アーロンは復旧が落ち着いた日の夜に、顔を合わせないまま伝えた。

「空き部屋、あるの」
「幾つかはな。ここから遠いが…」

背を合わせて横になる。
ここ数日が復旧と傷ついた同胞たちのケアで忙しかったのもあるが、求められなくなった。

「遠いの、嫌だな」

絞り出すように呟く。

「…お前、もう俺の機嫌を取らなくても、良いんだぜ?」
「今ので機嫌が取れるの?」

アーロンはおし黙る。


「アーロンさん、冷え性なのに。夜、どうするの」
「お前、なあ」

呆れた声がする。

「ねえ、甘えて良い? 邪魔になるなら、もう、来ないから、最後に」
「邪魔じゃねェよ。だったらお前はとっくに」

ベッドの中で向き直って、冷たい背中に寄りかかる。
すり寄って、キスをする。

「千代里」

彼が向きなおる。
頬を撫ぜる指が優しい。


ーーどんなに罪を背負ったって。


「アーロンさん、」


言葉がキスで消える。
舌が絡み合う。

キスで舌が傷つかなくなった。
鋭い歯をよけて、鼻に当たらないように首を傾げて。
バカみたいな努力の上に成り立つキス。滑稽な格好だろう。


「今日は、冷えるな」


ゆっくりとキャミソールの肩紐に手がかかる。
ハラリと落ちる。

月明かりに照らされた千代里の均質な美しい身体。
まだ痛々しく、ところどころに治りかけの怪我が見える。

自分のつけた傷。
誰かにつけられた傷。


「治ったのか」
「ほとんど。もう痛くないよ」


確認するように指が身体のラインをなぞっていく。
びくっと震えると、男の指が躊躇いがちに止まる。


「明日は、忙しいの?」
「いいや」


いったい、今までどうやって誘っていたんだろう。
この人は、どうしたら求めてくれるんだろう。


「…ねえ、寒い」


止まった指に触れて、手のひらを抱きしめる。冷たい腕。
寒くなんて全くないけど、脱がされた服を蹴って、男の胸に飛び込む。

ただ、ぎゅっとだけ、抱きしめられて、おデコにキスをされた。


「そうやって、くっついてれば良い」


しまいこむように抱き締められる。

手を回しきれないけれども。
男の背中に、重たい身体とシーツの隙間に手を無理やり突っ込みながら回して、もっとぴったり抱きつく。


「湯たんぽみてェだな」
「平熱が高いから」


左胸に耳を当てる。
どくどくと、早鐘を打つ男の心臓。


「眠れなくなる。お前が、いなくなると…」


目を閉じてすぐ、すう、と寝息が聞こえる。
安心しきった顔に、心臓が掴まれたかのように、痛む。
まるで、子どものような顔だったから。


「おやすみなさい」


明日は今日より、あなたが安らげる日でありますように。