手。指がぎこちなく絡まってる。
水かきがあるものだから、恋人つなぎができない。

瞬き。ぼやけた視界。
ピントが合う。


「アーロンさん」


起き上がって、傍で眠る男の顔を叩く。
もしかして、看病をしていたのだろうかと、思い上がる。

男の目が開く。
与えられた部屋のベッドに寝かされていたようだ。


「戻ったか。今度こそ、殺したかと思ったぞ」


シャハハハハ、と笑った目元に、大きなクマがのぞく。
まだ離されない手に、力がこもる。


「…あたし、どのくらい」
「半日だ。もう、外はすっかり夜になっちまった」


起き上がった身体を、とん、と押される。
ベッドに沈み込む。


「一人で寝られるか? 死神が追ってこないか、見ててやろうか」


繋がった手が、離れかける。
立ち上がった男を追いかけて、指を絡める。


「…うん」


混ざり合わない肌色と、青い色。
満足に握りあえない手のひら。


「ああ」


ぎし、と二人分の重さでベッドが沈む。

驚いた。身体が冷え切っている。
アーロンの方が温かい。


「…夢を見たよ」
「賽の河原にでも行ってきたか?」
「そ! おまけに、あたし生き返る場所、間違っちゃって」
「半日も、どこをほっつき歩いてたんだ?」
「病院。あたし、向こうでも怪我だらけだったの」


おかえり。
髪を撫ぜる男の手のひら。

海の匂い。


ここが、あたしの生きる場所。