侵入者です、と引きずり出されて人外に囲まれた。
地獄の閻魔が、目の前にいるのだと本気で思った。





どさりと、男が横に倒れる。
ふー、と早々息を整えると、興味もなさげに服を着出す。

「ああ、服をやらねェとな」

水着を拾い上げて、裸の少女を見下ろす。なめまかしさを増した事後の気だるげな姿に、二回戦がチラついた。
おそらく部下が事の間に持ってきたであろうタオルを取り、少女にかける。

「ペット、お前の名前は?」
「千代里」

少し掠れた声。
起き上がることも出来ないようだ。

「あなたは?」
「はァ? 俺を知らねェのか?」

そういえば。怖がり方が少し違和感があったな、と男はベッドに腰掛けなおし、まじまじと女を見つめる。

「俺はアー口ン。この島と海一帯の支配者だ。何も知らねェのか」
「あたし、……死んだはずなのに」

とろんと、眠たそうに瞼が閉じる。
すー、と寝息が聞こえて、起こそうと伸ばした手を、寸前で止める。

柄にもなく、休ませてやろうと思うほど、安らかな寝顔だった。





ピッ、ピッ、ピッーー
闇の奥で、機械音が響く。

帰らなきゃ、とふいに思う。





首輪をつけられたのは捕まって二日目の朝だった。
身体にかかる圧迫感に目を覚ますと、男が馬乗りになって首になにかを付けていた。

「ペットには必要だろ?」

ジャラ…と首から伸びる鎖が男の手に握られている。
引っ張りあげられて、起きたら応接間へ行け、と命じられた。

応接間へ行くと食事が用意されていた。タコの姿をした魚人が、遅かったな〜、と座るよう促す。

「アーロンさんに気に入られて良かったな〜。機嫌を損ねて、その日のうちに死んだ奴もいるぞ」

にゅっ、と底抜けに明るいタコの魚人は、優しい眼差しを千代里に向ける。
応接間の外を通る魚人たちは、チラチラと千代里を気にしながら、しかし声もかけずに目があうとそそくさと立ち去っていく。

「人間がそんなに嫌いなんだね」

改めて、事後、八つ裂きにされなかったことを安堵する。
どうやら死んでもいなかったようだし、と千代里は首輪に触れる。

一通りのことを、ハチは千代里に伝えてくれた。
そして魚人という存在がいかに優れているかということも。

もう一人、この帝国に、人間に仇なす人間がいると聞いた。
しかし、今はほとんど出払っていて、滅多に会えないという。

「ナミは航海士としての技能を買われて俺たちといるんだ。お前みたいな愛玩動物とは違うんだぞ」

私は腫れ物だな。

近くを通りかかった貨物船を襲撃しに行って、アーロンは夜まで帰らないという。
どんな顔をして会えばいいのか、知れば知るほど打算的で惨めな人間になりそうで、怖い。

「どうして、そんなに人が憎いの?」

ぽつりと聞くと、ハチは困ったように笑った。

「人間は、俺たちの……」

だけど、彼が最後まで答えることはなかった。