とっぷりと夜も更けて、ますます盛り上がる中、アーロンは千代里に下がるぞ、と耳打ちした。

「俺が長くいるとあいつらがハメを外せねェだろ?」

いきなり千代里を抱き上げて派手に場を騒がせる。しらけさせも、フェードアウトもしないで退場することに驚く。リーダーの器量というのはこういうことなのだろうな、と。眩しいものを見るように、男を見上げる。
屋内に入ってしばらく歩くと、ベッドルーム手前の廊下で千代里をおろす。
足が床に触れると、がくんと、ちぎれるような痛みが走った。

薄暗い藍色の世界で、歩く度に足が痛むことを思い出す。

「それ、お前…」

侵入者!
そう捕らえられたとき、真っ先に海へと飛び込んだ。
水の中なら逃げ切れると思って。

まるで人魚のようだった、
と、追いかけたチュウは言った。

だが、もちろん敵うわけもなく、足が千切れるように痛んで千代里は早々に諦めて捕まった。
千のナイフで切り刻まれているような、歩く度に血が出るような、そんな痛み。

「肉離れです」
「俺のせいか」

昨日の激しい情事が…と勘違いをする男を、千代里は黙って否定も肯定もしなかった。

「今夜は知っての通り、気分がいい。情けをかけてやらないこともないが?」

差し伸ばされた手を、掴んで痛みに耐えながら、立ち上がる。

「…かけないで」

まるで瞬間移動のように。全力で、彼のベッドに叩きつけられた。