過去と目合う獣たち

やっと動くようになった身体で、思い切り男を突き飛ばす。
ゴホゴホと咳き込みながら、その場に膝をついた。


「その言葉、後悔させてやる…!」


悔しい。悔しい。悔しい!

負け犬になんとやら。
全然、手が、届かなかった。


「ヤハハ、もう少し暗殺する気なら殺気を抑えねばどうにもならんぞ」


目の前から男が消える。
お尻から首へ、背中をなぞる、指の感触。


「…ッ!」
「私を見る視線に、気がつかなかったと思うか?」


やはり、気づいていたのか。
なんで。それなら。

分かりきっていたのに?


「どうして」


首を覆う手。
顎を上に向けられる。

後ろから覗き込む顔が、影をおとす。
暗い欲望に神の口角が歪む。


「んん〜、良い目だ」


神の指が、口内に入り込む。
容赦なく喉の奥を突こうとする。


「ンン!」


噛みつこうと歯を立てると、ピリッと電気が流される。
はからず、また嬌声がこみ上げる。

力が強い男の腕から、逃れられない。
苦しまぎれに肘鉄を食らわせようとしたが、もう片方の手で拘束されてしまう。


「ん、んん、ん!」


抗議の声を上げる。
うえ、と吐き気がこみ上げる。

苦しい。


「さァ、気を取り直して、今夜の続きといこうじゃないか」


手錠でベッドに腕を拘束される。
口を解放されて、自由に息を吸おうとすると、男に抱き寄せられて、深く深く口付けされる。

舌が侵入する。
噛みつく。血の味。

頬を思い切り叩かれる。


「立場が分かっていないようだな」


す、と温度の下がる声。
怖がりたくなどないのに、心が凍てつくような恐怖に襲われる。

本能は騙せない。

それでも。
圧倒的な力の差を見せつけられて素直に従うだなんて、そんなこと、死んでも絶対したくない!


「そう、もっと怯えるが良い」


硬くなった胸の頂きをキュッと摘まれ、小さく電流を流される。
ずくん、と快楽がお腹に響く。

ビリビリと絶え間ない責め苦。
逃げようと身をよじると、痛いくらいに摘まれた頂きを引っ張られる。


「ッアアァアアアアア!!」


そして、全身を切り裂くような電流。


「気が遠くなるなァ。ジャジャ馬の躾は」


あ、ぁぁ、と口から声が漏れる。
呂律が回らない。

男の指が、くぱぁ、と秘部を開く。
ほんの少し、濡れ出したそこは、男を誘うようにキラキラと光る。


「コッチの口の方が、素直で可愛げがある」


高笑いをして、男が無遠慮に穴へ指を突き刺す。
親指で敏感な蕾を剥き出される。

冷酷な眼差しがぐらつく焦点を合わせた視線とあった瞬間、身体が、仰け反った。

続いて耐えられない快楽の刺激。
ちょうどいい電流が、背筋を這い上がり、子宮を潤し、脳天から足先まで甘い甘い刺激で貫く。

「…ッ!!ぁあああアーーーッ!」

終わらない、終わりの見えない、永遠の快楽地獄。
加えて突っ込まれた指が、抉るように曲げられて、抜き差しされる。


「ひぁぁあ、ぁあ、ああああ!くっ、そ!あっああ!ああ!はぅ、う!ああッんんんんんん!」
「んん、良い声だ」


涙が溢れて止まらない。
気持ち良すぎて、いかないように耐えるのがツライ。

「ッあ!こんな、ぁ、きもちよくなんかッ!」

足先に攣りそうなくらい、力を入れて、拘束されたベッドの柵を掴んで、首を振る。

「きもちよく、なんて、…ぅ!」
「強がってる割には、ほら」

くに、くに、くに。形を確かめるように、ゆるやかに男の指が蕾を潰す。
そして、膣内で、男の指が自分でも知りもしなかった1点を暴き、擦り上げる。


「え、やっ、やだ、あっあぁっ」
「俺に、犯される、気分はどうだ?」


くちゃくちゃと膣を探る指が、1本、2本と増やされる。

「…ッ!ぅんん、は、ぁ、」

男が見せつけるように、胸をチュパチュパと舐め、吸い上げる。

「っ、やだぁ」

膣の一点に、強く電気が流れる。
グチャグチャグチャグチャ!指が最大速度で抽送される。

「あ…ッ、ああ、あ!ぅ、ンーーッ!! イっちゃう、あ、そんなぁ、だめッ…!だめなのにっ…! イヤ、いやぁアーーーーっ!」

ガクン!と身体が意に反して飛び跳ね、堕ちる。


「…ぁ、あ」


屈辱。
果ててしまった。

ドロリと、指が抜かれる。
電流が止まる。

ガクガクと身体が震える。
甘すぎる刺激が、まだ身体を滞留している。シーツが肌をなぞるだけで、気持ちが良くなる。


「強がる割に、速かったな」


男が耳を食みながら、胸をもみだす。
もう電気は流れていないのに、びくん、と大げさに身体が跳ねる。


「くそ…、エネル…っ!」
「様を忘れるな」


ガリ!と耳を噛まれる。
また、びくん、と反応してしまう。

仰向けの身体を、男は腰で跨いだ上体を起こし、禍々しく天に向く肉棒を取り出す。
くちゃり、と膣の愛液を取ると、見せつけるように、男のものへ、トロリとかけて見せる。


「ヤハハハハ!こんなことでは、先が思いやられるぞ!」


触られただけで、軽くイキかけた。
汚らわしい男の欲望が、ドクンドクンと脈打つのが見える。


初めて、純粋な恐怖を覚える。


今までこんな風に快楽に狂ったことはなかった。
イッたことなんて数えるくらいしかなかったし、快楽を覚えることも滅多になかった。


「あ……」


舐めろ。とオスの匂いを撒き散らす太いカタマリを押し付けられる。
唇を閉ざして目を閉じる。

無理やりこじ開けて入ってくるソレに、泣きながら、舌を這わす。


「…少しは懲りたようだな」


頭を掴まれる。
紅い毛を、男の指が絡めて撫ぜる。

舌で包み込んで、男の抽送を邪魔しないように、耐える。

十分に濡れると、よし、と呟いて取り出して、ついに秘部の奥へ差し込む。


「ぁあ、これは、良い…ッ!」


ケタ違いに大きなモノが、めりめりと裂けているはずの膜をさらに裂くかのように押し広げてくる。
骨盤が広がってしまうかのような痛み。

だが、前戯のせいで、それすら、ゾクゾクと快楽に変わってしまう。


「姉妹そろって、そっくりだ」


パンパンパンパン!!
カエルをひっくり返したようなM字に股を開かれて、子宮に当たる奥までグングン突かれる。

嬌声を上げながら、大声で泣いた。


「あッ、いやぁ、アアッ、あたってる!そこッだめなの、だめ…ッ!」


結合部がグジュグジュと音を立てて、男の逸る欲望と愛液を混ぜて白く泡立つ。
ぐいん、ぐいん、と深く弱点を攻撃されるたびに、男のドス黒い感情が、雪崩れ込んでくる。


「なんで…ッ、なの…!」


果てながら、神に問いかける。
だが、答えは返ってこない。

代わりに、ニヤリと、笑みを浮かべてくる。


「ルビーの身体は、それは極上だった。オレのためにしつらえたような具合でな。淑やかで、お前とは真逆で…!」


ゾッとする。
姉を重ねながら、抱いているのだ。

どうして。どうしてなの。
お前が、殺したくせに!


「ああ…ッ、ちく、しょう!」


無限ループの合わせ鏡。読み取ろうと目をのぞく度に感情迷路で快楽が増幅されていく。
次第に思考は、享楽の彼方に堕とされていった。

素直になると、男はすぐに私の手錠を外した。
自分から求めて腰を振った。

その夜、私たちは、何度も何度も獣のように、まぐわいあった。


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