Glass8 人ならざる者が生まれる場所。愉快でひと時の幻影のはじまり


 現代社会において、人は端末を使い情報交換を行う。
それはここ数百年の間も変わらない。昔は色々な呼び方をしていたようだが、それは端末という名詞として定着して行った。
店の始まるだいぶ前。朝の早い時間、寝ようかと店の片づけをして、軽く外を掃除していると、遠くの方でサイレンが響いているのを耳にする。
ほんの少し意識を集中させれば、概要が視えて来る。

《なんか、いきなり落ちてきたらしいよ》
《……が、………って……》
《こわーい》
《っていうか、……が××きゃいいだけじゃない?》
《×××って……で楽しめるからいいのに。こういう事件あると……》

(っ……人間の邪念程、疎ましいものはないですね。こういうのが私たちの糧になるのも、何とも虚しいものですが)
微かにかかる前髪を払いのけ、紅い瞳は眩しそうにビルの隙間に仰ぎ見る朝の空に何処となく、気を沈めた。表があるから裏がある。善があるから悪がある。

 その日の店内。
「いらっしゃいませ」
いつものようにお客様を迎え入れ、注文を取りながらそれぞれのペースでこの空間を、時間を満喫されて行くモノ達。
「こんばんは、この席良いですか?」
指さしたのは空席ではあった。その場所は、カウンターの一番右端の席。
指さしたモノからは微かに――。
それを見越したように扉のベルが鳴る。
 雨の香り、大きな青い瞳の雨の日のシンデレラだ。
「お久しぶりね。また今日もいつものお願いできるかしら?」
そう言ってカウンターの一番右端から一つ空けた席に着く。それを不思議そうに見ていると、彼女は口元に人差し指と中指をそっと宛てて、その席はそこの人が座ろうとしている席でしょう? と微笑うのだ。
「お客様どうぞ、こちらへ」
そう促せばその者は、すっとそこへと腰を下ろした。
「ブラック・レイン」
それだけを口にしてその者は口を閉ざした。隣に座る雨の日のシンデレラは何を視るのか。彼女を星の瞬くような目で見つめていた。
 フルート型のシャンパングラスに、黒のリキュールであるブラック・サンブーカ20ml、シャンパン適量を入れ軽くステアした黒いカクテル。それを作り終えると、右端の席の彼女の前へと置いた。
「ブラック・レインでございます。それとこちらが、サンドリヨンになります」
雨の日のシンデレラの前にも置くが、
「今日はフルーツ少ない……」
と不満を零されてしまう。
「すみません、今日は材料が揃わず、装飾のフルーツは少なくなっているんです。フルーツをご所望でしたら、フルーツの盛り合わせか、フルーツサンドをお勧めいたしますが……」
「……まぁ、いいわ。あなたにはよく迷惑かけているし。私、サンドリヨンの装飾のフルーツを抓むのが好きなの」
そう言って微笑む彼女に、礼の言葉を口にする。
そこへ、慌ただしくベルが鳴り響く。
「うわー……すっげー雨、とりあえず雨宿りしながら……」
入って来た少年が硬直する。その後ろについて来た褪せた、というような落ち着いた金髪の少年もまた、この場を見て察したのだろう。ぽかんとした表情をした後、先立っていた猫耳帽の少年を引き戻して扉を出ようとした。
「あ、お待ちください。お客様!」
慌ててカウンター下からタオルを取り出し追いかける。雨の中傘を持っていなかったこともあり、追い返す気はなかった。
「いえ、僕たち未成年ですから」
褪せた金髪の褪せた紅色の瞳。
「確認しないで店に入ってすみませんでした」
猫耳帽に青い瞳の少年。
どことなく、現実味を離れた様なそんな雰囲気の二人を、雨が止むまで。を理由に店へと招くことにした。勿論未成年にアルコールを提供する事はしない。
今日はまだ客足が少なく、カウンター右端の彼女と雨の日のシンデレラ、テーブル席に男性一人くらいしか居ない。
「よろしければカウンター席にどうぞ」
そう促すと、猫耳帽の彼は目を輝かせて、カウンター席と呟いているのが聞こえた。
「どうも」
そうクールに言って右端から四番目の席へ褪せた金髪の彼が座る。
「え、俺は?」
「……空いてるだろう、僕の隣」
座るは左から二番目か雨の日のシンデレラの隣、右から三番目の席になる。
帽子の少年は悩みに悩んで、紅瞳の少年の左側、左から二番目の席に座った。何とも不思議な光景だ。
一見してみれば、若者が集まっているようなそんな雰囲気。おとなしめの彼女とロリィタのような彼女、ヴィジュアル系寄りのロックな雰囲気の彼、パンク系な彼といった感じだ。
「お二人は何か飲み物のご注文があれば受け付けますよ。勿論アルコールはお出ししませんが」
紅と紅が一瞬交わった。
「じゃあ、バージンブリーズをお願いしてもいいですか」
目を伏せてそう言う彼に、隣の彼が何が起こったのかわからないというように、目が泳いでいるのが分かった。
「彼が頼んだのはノンアルコールですよ。名称がかっこよく聞こえてアルコールかと思ったようですね」
「え、あ、はい。ちょっと! 俺にもなんかお勧めなの教えてくださいよー」
こそこそと彼を引っ張って、耳打ちしている様子に思わず笑ってしまいそうになる。
「同じのにするか? バージンブリーズはグレープフルーツジュースとクランベリージュースを合わせたミックスジュースの事だ。苦手じゃなければ……あー、好きなフレーバーとかあるならそれをベースに作ってもらった方が正解だと思うけど」
「俺もかっこよく注文してみたいです!」
(ああ、なるほど……でも、僕は彼の好きな味とか分からないしな……。それに詳しいわけじゃないし)
じゃあと耳元に囁く彼に、猫耳帽の彼は複雑そうな顔をする。何を言われたのだろうか。
「じゃあ俺、ブシーキャットで……。なんか違う気がするんだけど!?」
思わず吹き出してしまう彼に、視線を変えると、控えめに笑いを堪えている雨の日のシンデレラが瞳に映る。
「かしこまりました。ブシーキャットですね」
先に注文を受けていたバージンブリーズを仕上げる。彼の言うように材料は比較的少なく、手頃に作れるノンアルコールカクテルだ。
大き目のグラスにクラッシュアイスを入れ、クランベリージュース60ml、グレープフルーツジュース30mlを入れステア。赤が映え、シンプルであるが、さわやかなフレーバーのカクテル。ストローに花の装飾とオレンジの鳥をグラスにかけ、完成。それを注文した彼の前へ置く。
小さく息を呑んだ後、すごっと小さく口にしていたのを耳にして、思わず笑ってしまいそうになる。クールではあるが年相応の反応を見せるので、何処かで安心に似た様な感覚が心の中に芽生えたのだ。
「すげー本当にお酒みたいだ」
「一口飲むか? 後味が苦くてもいいならだけど……」
クランベリージュースの独特の渋さ、グレープフルーツの独特の苦さがあるのもまたこのカクテルのいいところではあるが、人を選ぶかもしれない。甘いのが欲しいならサマー・デ・ライトや雨の日のシンデレラがよく頼むサンドリヨンがお勧めである。
 ちなみに、サンドリヨンもシンデレラも同じノンアルコールカクテルを示す。呼び方の違いというだけであるので、注文する時はどちらでもいいらしいが、最近ではシンデレラの方が分かりやすいのかもしれない。
「お待たせいたしました、ブシーキャットになります」
そう言って黄色のノンアルコールカクテルが置かれる。見た目は本当にオレンジジュースのそれに見えるが、グラスがグラス故に、オシャレ感が漂っている。
「で、なんでこれを俺に勧めたんだ?」
理由に迫る猫耳帽の少年。
「え、あー……帽子?」
少し言うのを躊躇いながらも返答すると彼は、青い瞳から生気を失ったように一瞬、目の色が暗くなった。
「ちょ、帽子が猫だからって……そんな理由かよ……」
はぁっと息をついてブシーキャットを口にする。美味っとすぐに表情が変わる様子を見ていた。さて、右端のブラック・レインの彼女はどうしているかと、近づけば最初以上にその気を感じる事が出来た。
「――でさ、あの後確かによんちゃんねるは見ないようにしてたんだ。あれからちょいちょい、ROM専だったりもしたけど。やっぱり気になって」
「見たんだ」
「だって、アリスさん本当に元気なくなって行くからもしかしてって……」
「ああいうのは疎いって前に言っただろう。けどバンドメンバーがさ、また性懲りもなくそういうの見てさ――。だから正解といえば正解なんだ」
 以前彼は言った。『それは無闇に色々と出まかせ書いて、どれが真実だかわからないようにするから』だと。自分のバンド曲の投票をファンでもないゴミクズ達が一団となって投票していたらしい事が分かったのだと言った。
「僕は気にしてないよ。今はこうして声だって出てる、まだ完全にじゃないからライブもそんなにはしてないけどね。それでも、こんな声じゃ仕方――」
「それは! それは、アリスさんの大切なモノを守る為のアリスさん自身の犠牲じゃないですか。痛みを負ったのはこいつ等じゃない。こいつらはバンドマンでもないのに……」

 端末に映される画面:
【ヲチタ星屑の薔薇 スレ】

0238名無し@百合の方が綺麗:なんかさー自殺未遂したくせにまだバンド続けてるらしいよね ewnkd87shfyZ

0239名無し@百合の方が綺麗:ライブもね、あまり声とか出てないんだよねw ppGJ74

0240名無し@百合の方が綺麗:ライブする意味なくね? やめればいいのに LO54Ftybxz

0241名無し@百合の方が綺麗:懐中とかぴょん可哀想! UUnc32

0242名無し@百合の方が綺麗:何故そこに紡糸入れないw 紡糸嫌われてんの? 笑える ewnkd87shfyZ

0243名無し@百合の方が綺麗:>>0105 所でこれどうなったの? 書いてないんだけどみんな知らないって奴? 特定班。情報きぼんヌ!!!! ootebskS

0244名無し@百合の方が綺麗:焼身とか引くわ。なんで焼身自殺しようとしたん? UUnc32

0245名無し@百合の方が綺麗:このバンド下手。早く消えろ Wkj54O8

0246名無し@百合の方が綺麗:処女声キモイ。ああいうのは声優だけでいい。楽器出来ないからvo.やってるらしいよ。っていうか本人見てたりして? わざわざ焼身自殺しかけて気を惹きたがりの構ってちゃんやめた方がいいと思うよ Tyhgxx6229k

0247名無し@百合の方が綺麗:>>0243 氏ね Ad22jcp

0248名無し@百合の方が綺麗:>>0247どうした? 本人登場!? やばい、ウケるんだけど。擁護ちゃん来た。0247本人もしくはステロ大好きちゃん超笑えるんだけど、あのバンドの何がいいんだよ? 他に有名なの居るのにインディーズとか。しかもステロとかオワてる r5lausof995W
       …


(あ、のこも、傷を、オってイる……? 可哀想、カワイソウニ……)
「へぇ貴方、バンドやっているんですね。是非聴いてみたいですね。よろしければ、ですが」
紅い瞳がその薄い紅に語るように声にした。
「今は、話していた通り今までのようにはやっていないので、時間が大丈夫でしたら今度CDを持ってきますよ。インディーズバンドですから、出回っていたりはそうないと思いますし」
そう言って笑う彼の表情は、やはり無理をしているようで何とも見ているのが辛い、という感じだ。あくまで魔王の身ではあるが、全ての悪を善にみたいな考え方をしていない。相当昔の魔王はどうだったかは知らないが、今の魔王である私は、少しでも人間の心を癒せたらと思ってしまう。それに、
(右端のお客様は相当危ないですからね……)
ちらりと視線をやると、その隣に座る雨の日のシンデレラがにこっと微笑みかけてきた。
「?」
「あなたの大切なモノってなぁに?」
「へ?」
「……僕に聞いてますか?」
「ええ。あなたに聞いているわ」
まつ毛がくるりんと上がった青い大きな瞳に映る彼。頬杖をついて彼女を見つめる。
暫しの静寂の後、力なく笑って答えた。その答えにあなたは正しいわと小さく微笑みを浮かべて返してきたのを、思わず見惚れてしまう。
「そんなチカチカしてる所の言霊なんて無視すればいいのよ」
「……きない……」
ふっと後ろから視線を感じ、猫耳帽の彼に褪せた紅瞳の少年が口を開く。
「いや、僕は何も言ってないよ」
「あなたも、そのままだと悪いものになってしまうわ。ブラック・レインだなんて、怖いって思われてしまうわ。たまには罰を与えてもいいのよ、溜め込みすぎてはだめよ、ね? マスター」
(この方は、何か察して私に振るのでしょうか)
「まぁ、そうですね。解放を手伝って差し上げましょう」
そう言って笑うと棚から新しいグラスを出して来て、何やら作り始めた。そんな様子を気になった二人の少年が少しばかりカウンターへと身を乗り出して覗き込んでくる。
シェイカーに氷、テキーラ30ml、トリプルセック15ml。
トリプルセックはホワイトキュラソーの事だが、甘みを抑えた物なのでオレンジの香りが強く、すっきりとしたものである。普通のホワイトキュラソーでも苦みを微かに感じるが、甘さが強くよくお菓子等にも用いられるのが有名かもしれない。
更にグレープフルーツジュース40ml、グレナデンシロップ5mlを入れシェイクする。それらを氷の入ったグラスに注ぎ入れる。ピンクオレンジ色のアイスブレーカーが完成。
「どうぞ」
ブラック・レインの彼女の前に、提供する。鮮やかすぎると顔を顰めるが、ゆっくりとそれを手に取ると、口元まで持って行きそれを煽った。
(高ぶる心を静めて≠ニいうカクテル言葉のカクテルですが、彼女に届くかどうかは……)
「高ぶる心を静めて……」
「え?」
「カクテルに秘められた言霊よ」
青い瞳の彼女がそう、褪せた金髪の少年に言う。ふわりと微笑んで、カウンター側へと視線を戻すと、レイルへ向かってこう言うのだ。
「マスター、大分前に私が連れてきたあの子が美味しそうに食べてたアレ、この子達に作ってくださる?」
「……」
その言葉に一瞬思考が停止する。彼女の言うあの子とは深い青色の星座の彼女の事だろう。正確には少年であるが。
「かしこまりました」
そんなやりとりに、慌てた様子の二人。口を開くと遠慮の言葉が飛び出る。
「いえ、僕たちお金そんなにないんで」
「俺もです。それが何なのか分かんないですけど」
「……」
「……大丈夫よ、私が勝手にあなた達に食べてほしいと思っただけだから、遠慮せずに食べて行ってちょうだい? あの子があんなに美味しそうに食べてるんですもの、あなた達も気に入ってくれそうと、思ったのよ」
そう言って手を胸の前で微かに触れ合わせて言う雨の日のシンデレラ。
「彼女もこういっている事ですし、是非」
そこまで味を買われていると知って、心なしか悪い気はしていなかった。その所為か、こちらまで口添えをしてしまっていた。
「勿論、あなたにもね」
そう言って肩へ手を添える。隣の彼女に。
「えっ。私、もですか?」
驚いたように目を見開く彼女。既に彼女の黒い霧がかった気配は薄らいでいた。
 雨の日のシンデレラに頼まれ、三人分の特製ハンバークを作る。丸々と膨らんだ肉厚なハンバーグであるのが特徴的である。
「お待たせしました」
そうカウンターへ置くと、それぞれに目を丸くして、特製ハンバーグを見つめている。
「すっげ、美味そう……!」
「本当にこれ食べていいんですか?」
気まずそうにそう言ってこちらを見る、褪せた金髪の少年。是非と勧めれば遠慮がちにフォークとナイフを持ち、その丸々としたそれにナイフを入れた。
そしてそれを口へと運ぶ。
「! 凄い、美味しい、です」
「それはよかった。彼女の方はどうですか?」
「こっちも食べてくれてはいるわ。まだ何も言ってはくれないみたいだけど」
黙々と口にするブラック・レインの彼女。ほたりと何かが落ちるのを見た気がしたが、気づかないふりをする。
「そうだ、私の知り合いに少し面白い事をしてくれる方がいらっしゃるのですが。先程の端末の詳細を教えていただいてもよろしいですか?」
「え? 詳細って、URLの事?」
「それです。あなた達には害は及びませんよ」
そう言ってにっこりと笑うレイルに、害があったら困りますと猫耳帽の少年が言う。
大元のバンドをしている彼に確認をとって彼は詳細を教えてくれた。
「面白い事って何ですか? サイトの閉鎖とか?」
「ま、まさかウイルス撒くとか言わないですよね?」
「さぁ、私とは知り合いですが、その時の気分で事を起こしてますから何とも」
まずくね? と顔を青白くする猫耳帽の彼に対し、特に期待をしていないと冷めた瞳をした褪せた紅。
 カウンター下からノート型の端末を出し、操作をする。猫耳帽の彼に教えてもらったページを開く。
(知り合いなんて殆ど居ませんけどね……)
ノート型の端末を操作する。とはいっても何かを記しているふり。こんな電子機器の羅列など、すぐに混ぜこぜにすることは容易い。人からは見えないだろうノート型の端末の間で、瞳が微かに光を捉えてやがて戻る。
「そろそろ変化が起こるんじゃないですかね?」
そう言ったマスターの言葉に、端末を開く少年。それを覗き見る褪せた金髪の少年。その瞳は期待もしてないといった、全てを諦めた様な色をしていた。

端末に映される画面:
【ヲチタ星屑の薔薇 スレ】

0238名無し@百合の方が綺麗:なんかさー自殺未遂したくせにまだバンド続けてるらしいよね e東k8都h四yZ

0239名無し@百合の方が綺麗:ライブもね、あまり声とか出てないんだよねw ppGJ74

0240名無し@百合の方が綺麗:ライブする意味なくね? やめればいいのに LO茨城ty玉xz

0241名無し@百合の方が綺麗:懐中とかぴょん可哀想! UUnc32

0242名無し@百合の方が綺麗:何故そこに紡糸入れないw 紡糸嫌われてんの? 笑える ewnkd87shfy谷

0243名無し@百合の方が綺麗:>>0105 所でこれどうなったの? 書いてないんだけどみんな知らないって奴? 特定班。情報きぼんヌ!!!! ootebskS

0244名無し@百合の方が綺麗:焼身とか引くわ。なんで焼身自殺しようとしたん? U校n23.f風岡

0245名無し@百合の方が綺麗:このバンド下手。早く消えろ Wエメ54O8

0246名無し@百合の方が綺麗:処女声キモイ。ああいうのは声優だけでいい。楽器出来ないからvo.やってるらしいよ。っていうか本人見てたりして? わざわざ焼身自殺しかけて気を惹きたがりの構ってちゃんやめた方がいいと思うよ Tyhgxx名29k

0247名無し@百合の方が綺麗:>>0243 氏ね Ad22jcp

0248名無し@百合の方が綺麗:>>0247どうした? 本人登場!? やばい、ウケるんだけど。擁護ちゃん来た。0247本人もしくはステロ大好きちゃん超笑えるんだけど、あのバンドの何がいいんだよ? 他に有名なの居るのにインディーズとか。しかもステロとかオワてる r5lau可愛f995W
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「げっ、なんか文字化けしてる所がいっぱいある……。やばいよ、ウイルスじゃね? 壊れたりしないかな……俺の携帯……」
「なあ、この文字化け? 以外にもなんかこの変な記号の所、線入ってないか?」
「あ、これリンクか? 今までそんなのなかったのに」
怖いけど、とその文字列にポイントを合わせクリックする。するとページが飛び……――。
知らないページが現れた。

 「水島校風岡みれいちゃんnel……?」
「プロィールページかな? SNSとかも見れるみたいだけど」
「ねえ。それって、書いた人の事じゃないのかしら?」
いつの間にやら可愛らしいお菓子を頬張っていた彼女が、端末を見ていた二人にそう言う。
「え? ……書いた、人……」
もしそうであるなら、かなりやばいのではないかと思った。
「確かにSNSやプロフィールページに飛ぶという事はなんらかのからくりで、書き込みをした人に関連するページへのリンクが繋がったって事だよな」
「そうだね」
「反応薄っ」
「いや、だって急にそんな風になったってどうしたらいいか分からないし」
急に現れたリンクを片っ端からクリックしてみた。どれもそれ相応のページに飛ぶ。しかしそのようなページの中やネット上にページが存在しないだろう者の情報に、えぐいものが表示された。
「これ、住所じゃね?」
「おや、それは結構痛手なのでは?」
「いやいや、マスターのお知り合いでしょう。それマスターが言っちゃうんですか」
「ふふふっ、そうですね。でも、これで書き込む方の特定が出来たので、対処は出来るんじゃないですか?」
「確かに、ここの住所と名前覚えていればライブチケットが抽選でって時は、まぁ……」
話しをしている内に、掲示板が騒がしくなる。
(大慌てで書き込みを削除しようとしているようですね……。無駄な事を)
「とりあえず、メモしておきましょう!」
「あ、ああ」
ちらりとこちらをみた褪せた金髪の少年は、何か言いたそうな表情をして暫くして目を伏せた。
「なんか、スレが点滅してる……やっぱりウイルス?」
「多分対抗してるんじゃないですかね」
「対抗?」
「書き込みを消そうとしてる書き込んだ人達の邪魔をしてるって言ったら分かりやすいですかね。まぁ、邪魔もなにも先に事を起こしていたのはこちらの方達ですから、何かしらの文句を言う権限はないと思われますが」
(……怖ーっ)
「……。恐ろしい事を言うんですね。確かにその通りですけど、これで収まるほど人間はお利口さんじゃないですよ。僕はそう思います」
苦笑いを浮かべた彼に、顔を強張らせた猫耳帽の少年。すっかり冷めてしまったハンバーグを口に含み始める褪せた金髪の少年。
 「マスター、そろそろ私帰ります」
「わかりました。またお越しくださいませ」
「ええ。今度はフルーツたくさん用意しておいてくださいね」
そうふわりと笑って店を後にする。雨はゆっくりと遠退いて行った。
「そろそろ僕たちも」
戴いたハンバーグを食べ終え、料金を支払う。
「あの、ハンバーグの分は」
「大丈夫ですよ、彼女から頂いていますので」
また一人とお客様が帰って行く。
「じゃあ、今度CD持って来ます。朝とかって居ますか?」
「ええ、(こちら)は開いてませんが居ますので、声を掛けていただければと思います」

彼らが帰った後、反芻する彼の言葉。
『これで収まるほど人間はお利口さんじゃないですよ。僕はそう思います』
(それくらい素直だったら楽なんでしょうけどね)
まだ残っているブラック・レイン。それはやがて、穏やかな雨へと変わるだろう。

ノート型の端末を覗く。相変わらず慌てている書き込み主が書き込みさえしていない私に、暴言を吐いている。
「少し煽って差し上げてもよかったんですけどね。流石に被害被るのは面倒ですから。これで少しは反省してくれたら良いのですけどね」
また、彼の言葉が面白いくらい反芻する。
――本当に××××ない生き物、ですよね。
くすりと笑って端末を閉じるのだった。



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