L05t その彼、消失
やがて酸ノ雨は止み、喪われていた総てを取り戻す。
握られた冷たい雨に血を欲した剣も消えて、また彼は戻ってきた。眩しいばかりの季節と共に…。
光が彼を漸く照らしたのかもしれない。この光が幻(まやかし)であっても、もう嘆きはしないだろう。
失った少女は戻っては来ないが、ただ胸(には記憶(おもいで)がある。
少女と過ごした刹那の記憶(おもいで)が。
その紋章も消える事はなかったがこれは自分の意思。
この紋章を引き継ごうではないか…。
この酸ノ雨に精神(ココロ)堕ちていた僕は、きっと弱い所為。
一度は死んだ命(ともしび)に等しい。
だが、僕は"僕"である。
『六道輪廻か…』
呟いた声は此処にいる誰かに聞こえただろうか?
その答えは周りの反応のみが悟る。
やってきた季節よ。
水面の楽園に還る日はいつか?
このまま四季を廻る事は出来るだろうか?
あぁ、どうか一度だけでもいい、四季を僕の瞳(め)に映して…
- 6 -
*前 | 次#
ページ: